寮生活をする場合の注意点

中学や高校で、自宅を出て寮生活するお子さん、今でも結構な数いらっしゃいます。遠くの学校を希望したケースもあれば、とりあえず力試しに受けてそこは合格したがそれ以外は全落ちした、というケースも聞きます。でもせっかく行くのであれば、親御様の庇護(という名の監視?笑)から離れるとはいえ、3年後~6年後にさらに状態が良くなっているようにしておきたいところです。親から離れました、成績が急降下しました、高3で手の施しようがありません、というのもなかなかつらいところですよね。

ここでは、勉強に限った寮生活について書きますね。
まず知っておいてほしいのは、寮生活をすると多くの場合、勉強に関してかかわってくる大人が激減します。具体的に言いますと、まず両親や同居していた近親者がいなくなります。次に担任や教科の先生は生徒の年齢が上がるにつれて生徒との距離が遠くなってきます。エリート校ならなおのことです。また、寮の先生方は勉強を見ることはあまりありません。寮全体で「20時~23時は食堂で全員勉強」などの規定を作っているところもありますがまれですし、出席は生徒の自由に任されています。もちろん塾にいくこともなかなか少ないかと思います。高3以外は塾に通う事を禁止している寮さえあります、安全の観点やバイト・悪い遊びを覚えないようにですね。さらに部活に入っても、顧問や監督の先生も声はかけてくれるでしょうが、「学力は自己責任」という前提があるのでなかなか深くかかわることはないでしょう。こうやってお子さんの学力の動向を身近で注視・助言・叱咤激励などをしてくれる大人は激減します。身近にいたときは親御様を中心に、近親者、担任の先生、塾の先生、近所の人がおこさんとつながっていて、お子さんを見ていたんですが、寮生活をするとそれがほぼなくなります。

もう1つ大きな問題があります。寮生活をするお子さん自身が、寮で学力を上げていく適性があるか、という点です。最も適性がない(つまり成績が急降下するタイプ)のは、自立学習ができていないお子さん、今まで誰かに強制されて成績が上がったお子さんです。強制や指示、さらにそれらをチェックする人の存在がないと頑張れない、というお子さんは中学受験~高校受験では相当数います。しかしそんな彼らが、強制も期待もほぼ皆無な状況(=寮生活)に放り込まれたらどうなるでしょうか?しかもお子さんは自立期(いわゆる反抗期)でもあります。親御様の声はますます届きにくくなります。

さて、からないことが出たら質問できる環境にあるでしょうか?AIに聞いてもいいと思いますが、まだまだ人から教わる方が効率がいいような気がします。さらに受験情報は豊富でしょうか?お子さんが自分で調べればいいじゃんって?強制されて育っている子は、自分から探す、取りに行くという行為そのものを知りませんよ(※)。関わってくれる大人が少ないところに放置されると、将来的に上手く行くとしてもかなり長い遠回りが必要です。もう1つ、寮生活では外出に関して厳しい規定を設けているところが多く、欲しいものが素早く手に入りにくいという事も挙げられます。

(※)よく言われるのは、「子どもには魚を与えるな、魚の取り方を教えろ」という、老子の格言です。ここでの「魚」はエリート中学・高校合格のこと、「魚の取り方」は狭義にはメタ認知やPDCAサイクルなどと呼ばれるもので、自分の成績状態を知り目標を決めて自分自身を実験台にして成績コントロール能力を身につけることです。早い子は小4~5で身に付きます。才能もありますが、訓練でも身に付きます。

逆に、寮生活で成績が急上昇するタイプも少なからずいます。自分の興味を自力で追及できるタイプがそれです。エリート校の寮生活では、勉強に関することに興味を持てば、の話ですけどね。寮生活したはいいが、興味を持ったのが演劇だったとなると成績は上がらないかもですね。私の拙い経験から1つ例を挙げます。担当した生徒の中に英語が好きだった生徒がおりまして、高校受験用の英語でも十分楽しそうでした。さて高校に入って寮生活を始めたらすぐに大学入試の英語の過去問に出会い(卒業生たちが寮に置いて行ったらしい)、社会科学の実験に関する論文が大好きになり高3で自分で心理学やマーケティングの論文を探して読んでいる生徒もいました。この生徒は寮生活をして大成功したケースかなと思います。このような「一人で自分の興味を追求できる生徒」が独り暮らしをすると、邪魔が極限まで少なくなるので成績は急上昇します。あなたのお子さんはどっちのタイプですか?

『寮生活をさせて自立した生活力を身につけ、親の束縛から解放されて好きに成長していけばいい。』
お子さんの寮生活を決めた親御様がよくおっしゃる言葉ですが、まあ心の底から「好きに成長していい」なんて思っていない印象です。「少なくとも偏差値〇〇の大学には入って、〇〇学部か〇〇学部を出て就職は〇〇社か〇〇社あたりだろうな」、的なものが本音なのではないでしょうか(笑)。もちろん、お子さんの自由も大事ですし最終学歴も大事です。ですが寮生活をするという事は3年から6年は親は、(退学させる以外に)直接かかわることはできません。たまに帰ってくるとか、電話やラインなどで親御様の要望や危機感だけ伝えるということ(あるいはそれを忖度させるということ)になりますが、それは「この結果は出せ、そのための環境づくりは与えられた条件で自分でやれ」という事を意味します。特に、今まで強制で育ってきて自分で魚1つ取ったことがないお子さんに「はい、今日から自由、自分で『(親が要求する)魚』を取れ」と言われても取り方が分かりません。そして寮生活では誰も教えてくれません。だから自分の好きな『演劇』の取り方を自分で学ぶかもしれません。親子間で紛争勃発の予感です。ぜひぜひ、寮に入れるのは熟慮の上でおねがいします。

寮生活する以外、選択肢がない、という場合はもう少し聞いてください。最も安心できる方法は、信頼できる大人を一人、お子さんにつけてください。教育や心理学に詳しい方、コミュニケーション力が高い方がおすすめです。お子さんの成績を上げるとなった場合、ほかの記事でも言及しましたが「5人の大人(役割)」が身近にいることが理想です。勉強を教える人、応援してくれる人、サポートしてくれる人、現状分析を起点に目的達成をデザインしてくれる人、やったか否か・できたか否かをチェックする人、の5人です。親元を離れる寮生活ではこの「成績向上をつかさどる5人の大人」がごっそりいなくなったり、関わり方が超薄味になったりします。ですのでその多くをこの一人の大人に担ってもらうのが少し安心です。親戚の方や個別指導者、家庭教師、オンラインでの指導者などにおねがいしてみるのも1つの選択肢としていかがでしょうか?

個別指導

Posted by tokashiki