インターナショナルスクールと国語力
インターナショナルスクール、最近増えていますね。
やはりインターナショナルスクールはお子さんの英語力の育成は言うに及ばず、従来の文科省が管轄するタイプの学校と比べて「表現する能力」や「積極性や個性」「異文化理解」などの育成にも良い影響を与える環境として、注目されてきています。
しかし、実際のところどうなの?うちの子には適切だろうか?とお悩みの方も多く、よく質問・相談される案件の1つになってきました。
そのあたりのことを、普通校で学ぶ生徒とインター(インターナショナルスクールのことをこう略すそうです)で学ぶ生徒の両方を個別指導で指導させていただいている立場から、少しお話しできればと思います。
ここではインターナショナルスクールの長所・短所等の総括内容は軽めにして、インターナショナルスクールに通う生徒によく見られる症状の「国語力(日本語のことです)やその周辺の能力の低下」について注視して書きたいと思います。
国語でお悩みの方は、すぐに下の方に飛んでお読みください。
お悩みの方に参考にしていただけましたら幸いです。
インターナショナルスクールを選ぶご家庭
まずはインターナショナルスクールって何?という話ですが、
それはいろいろな説明があり、学校区分でもかなり細かくなるので
ここでは細かく挙げるのはやめておきます。
おおまかに
・授業が英語(一部かすべてかは学校やクラス次第)で進められる
・文科省が認定する一条校(文科省の指導要綱にのっとって授業をする)とは限らない
以上のようなスタイルの学校を、ここで言うインターナショナルスクールとしておきます。すいません、雑で。
さて、じゃあ一体どんな方々がインターナショナルスクールを選ぶのかと申しますと、こんな方が多いですね。
これはもう疑いようがありません。インターナショナルスクール在籍の生徒なら「小学生で英検2級」はもう普通になっています。英検2級は日本では高卒程度とされ、大学入試共通テスト(旧センター試験)なら得点力8割ぐらいでしょうか。これは国内の大学受験において偏差値55あたりに位置します。本番まで6年を残してこの状態ですね。これを有利と言わずして何と言いますかね(笑)。
家庭内で使われる言語が英語の場合、すべてが日本語で進む日本の学校は普通に考えてお子さんに負担が大きいですね。まあ最近は公立小中でも、英語やスペイン語、ポルトガル語での対応ができる補助員を入れてくれるところもあるようですけどね。ですが一般的には、親御さんが「英語しか話せない」「日本語も話せるけど主に英語圏での生活が長い」「英語で教育を受けた」などの場合、日本の学校教育のサポート(勉強内容を教えることなど)はかなり難しい現実があります。言い方が悪いのですが、彼らは相当な環境整備をしない限り「落ちこぼれるのは時間の問題」とも言えます。これはかなりお子さんには大きな不利益となります。
海外生活が長くお子さんが日本語での教育をほとんど受けていない場合も、日本にお帰りになられた際(日本に転勤かもしれませんが)は公立私立問わず日本語・日本の価値観・日本の教育習慣の学校にすぐに入ることを避けて、少し「慣らし運転期間」を取る方もいらっしゃいます。そこでインターナショナルスクールも選択肢に入ってきます。もちろんこれから海外に転勤になること、そして海外に永住することになると見据えて、幼稚園の年齢からインターナショナルスクールに入れるご家庭もありますよ。
日本の一条校(いわゆる「学校」)は昨今、色々な問題に直面していますが、その大きな問題の1つに「生徒や社会の多様性に対応できない」というものがあります。地毛が茶色だからいじめられる、個性的なことをするとネガティブに捉えられるなど、具体例を挙げるときりがないですね。またそれと同時に、教育カリキュラムに将来性が見いだせない(日本のこれからを担う高校生に古文漢文、家庭科などは必須か?苦手な子にも無理に図画工作をやらせる意味は?運動会は全員で手をつないでゴール?)とお考えの保護者も増えてきております。そのような日本の学校にこだわらずもっと自由に学校選びを、となりますと選択肢の1つとしてインターナショナルスクールは候補に挙がってきます。
懸念されることは・・・
やはり何事も良いこと尽くめではないのが世の常ですね。インターナショナルスクールといえどもやはりデメリットはあります。指導の過程で気づいたことをさっと軽く挙げておきますね。
後で詳しく述べるつもりでいますが、やはり国語力、日本語力ですね。インターナショナルスクールに通わせる以上、国語力・日本語力への配慮は相当必要だと思います。極端なことをいえば「表面的な英語力は上がるが母国語としての日本語力は概して大きく下がる」という印象です。そしてこのことは、国語をベースとする学習(社会はもちろん、数学・理科も)に大きなマイナスを及ぼします。高校受験や大学受験では英語で有利になりますが、その他の教科は学校で教えてもらったことを日本語で理解しなおす(覚え直す)行程が必要となりますので、単純に学習量が2倍になります。ある意味、勉強以外に習い事を並行してやっているのと同じ程度の効率です。
学校に行ってしまえば学校での友人関係でうまく行くとは思います。しかし地元とのつながりはほぼなくなる可能性があります。そしてこれはお子さんだけではなくて親御さんもそうなる可能性があります。その結果、地元で盛り上がる行事(お祭りや成人式、青年会など)では孤独になります。特に成人式は古い友人と顔を合わせる最後のチャンスになるかもしれません。都市部に住んでいればそういう地域のつながりは希薄になってきているのでそれほど気にすることもないかもしれませんが、地方都市なら深刻となる(幼小中の友人とはすべて縁が切れる、地元愛がなくなる)かもしれませんね。また特に自己認識の部分でエリート教育を施していなければ、一般的なお子さんは「みんなと一緒」「普通であること」を望みます。お子さんの「普通でありたい」「普通がいい」という願望を取り上げてまでインターナショナルスクールに通わせるのであればその意味・効果はあるかどうか、もっと言えばその覚悟(お子さんが望まないことを強制し、お子さんの将来はもちろん、お子さんが大きくなったときの親御様への評価についても責任を持つこと)を親御さんがお持ちかどうか、しっかり天秤に掛けて決定してください。
これも多くの方が指摘しておりますが、インターナショナルスクールは一条校ではないので、国内の高校や大学に進学するとき、不利に働く可能性があります。特に①高い内申を必要とするところを受験する(4段階評価と5段階評価が混ざる可能性)、②ハイレベルのところは理社などもすべてハイレベル知識を日本語で要求される(インター内で内申を取る為に英語で覚える、入試で高得点を取る為に日本語でも覚える)という点です。地元でトップの公立高校なんかは内申も当日テストもほぼ満点が必要です。それは無理、となると1つ2つランクを下げての公立高校か、英語力をしっかり評価してくれる私立ですね。ちなみに「いい大学に行けるかどうか」は「いい高校に入れるかどうか」が重要です。このことは一般論や私の経験則ではなく、集団心理の特性(ハイレベル集団にいると自分もハイレベルになる)とピグマリオン効果(何かの良い期待を多く受け続けると本当にその期待に応えるように育つ)によって成立する、科学的にかなり信憑性の高い話です。
英語を話せる指導者はたくさんいらっしゃいます。しかしネイティブの英語話者の考え方・価値観と日本語でのそれを知りつつ、アカデミック(学問的)なアプローチ(具体的には学問領域全体を熟知しており、この学習内容が全体の中でどのような位置にあり何を強化することを目的としてどのような手段で評価するかを授業開始時に概観できる状態)で知識を広く深く教えられる、そしてできれば日本語もペラペラで日本ならこういう所が試験に出ると知っている、という指導者は限られています。日本の教科書をそっくりそのまま英訳して教えているだけ、という話を聞いたこともあります。
国語力(日本語力)と関係するところではありますが、家で日本語、学校で英語、となりますと双方ともにコミュニケーション手段としての言語力はある程度期待できます。しかし物事を深く考える力、抽象的な内容を理解する力(母国語、脳内言語とでもいいましょうか)は上がらないという現象が起きることがあります。さらに自立期(いわゆる反抗期)ともなると親御さんと話をしなくなるかもですから、大人の使う日本語に接する機会がますます少なくなってきます。すると日本語のお笑い番組も意味不明、と言い始めます。日本語の読書ももちろんできなくなります。それを防ぐために親御さんが何か手を打った方が良いですね。専門の塾もあります。インターナショナルスクールに通うとなれば基本的には学校の授業がほぼすべて英語ですので、それをサポートするのはまずは親御さんとなります。親御さんの英語力もかなり必要ですし、お子さんの英語力向上の環境整備もやらなくてはなりません。ご自身が英会話しかできないレベル、だとしてもです。親御さんが「私はそれは無理」ということであれば、フォローが必要な状態の子を放置することを意味します。そもそも「英会話ができればいい」という程度なら小学校からネイティブがいらっしゃる英会話教室で十分かと思います。日本の教科書をわざわざ英訳して教える一日6時間で週5の日本人の授業よりも、効率的だと思います。
外国では2か国語話せる人は普通にいるといううわさを聞きます。カナダなどは英語とフランス語が公用語ですから、そこで生まれて育てば両方話せるのが普通、などと言われます。ただ、言語能力の取得や発達、そこからの思考力の向上については色々な研究があり、いろいろ読み漁った結果、「日本で生まれたなら母国語と第一外国語は時期を分けて学ぶべき」、と私は考えています。乳幼児期、もっと言えば胎児のときからどの言語で話しかけられていたか、で母国語が決まると言います。小学校から英語の環境に変えても両親は日本語のみという状況なら、ネイティブ並みに両言語を駆使するレベルにはなかなかならないのではないか、と経験上感じています。乳幼児期から英語と日本語両方に高いレベルで触れる場が必要なんでしょうけど、日本では環境がそれを許さないし(例:本屋に行っても純粋な英語の本なんて都市部の大きな本屋以外ほとんどおいてませんからね)、環境を親御さんが整えようとするとそれはかなりの負担です多分。
国語力が心配ってよく言われますけど・・・
そこで一番気になる部分です。私はインターナショナルスクールのお子さんも、多くはありませんが学年問わず担当しております。長い生徒は4年ほど。結論から言いますと、やはり相談にいらっしゃったときは国語力(日本語力)の不足が顕著でした。しかもすぐに何とかなる状態ではなく、かなり時間を要する状態(2年で充分ですけど)がほとんどです。
そんな彼らが塾に来るきっかけは、文科省の一斉学力テスト、「国内の模試」など、「日本語がベースでインター以外の子どもも受けるテスト」を受けた時の「こんなはずじゃない」「ちょっ、これはヤバい」が多いですね。特に全国一斉学力テストなんかは、なかなかいい成績は取れません。もともと満点は取りづらいテストですし、基本的にすべて日本語ですからね。算数も英語で解いているインターナショナルスクールの生徒にとっては、日本語で出題される算数のテストは意味不明です。また模試などで理科や社会などの暗記科目は暗記事項がほとんど漢字なので、英語で覚えて(インター用)なおかつあとになってから日本語で覚える(国内の入試用)、という2重苦を背負わされます。
ちなみに英語もペラペラでインター内での成績も優秀、文科省のテストも優秀、もちろん国内の模擬試験の国語も優秀、何をやらせても優秀、というケースがあり、「これはインターナショナルスクールのおかげです」とおっしゃる親御さんがいらっしゃいます。実際にそういう生徒を担当させていただいたこともありそこで感じたことですが、恐らくこういうケースは「お子さん自身のIQが特別高い(そうなるよう親御さんが事前に入念に準備をされていた)」、「英語での成績と日本語での成績を両立させる質の高い環境を親御さんがそろえている」のどちらか、あるいは両方を満たしています。こういうタイプのお子さんは公立の小中に通うと逆に成長の鈍化が懸念されますから、「普通の子にはキツいところ」で「ちょうどいいキツさ」になると思います。その選択肢の1つとしてインターナショナルスクールを選ばれた、という事ではないでしょうか。
英語中心の生活をすれば、日本語がおろそかになるのは当たり前であり、二兎を追う(「英語も日本語も」、あるいは「インターの成績も国内での進学も」)なら並大抵のことでは難しいことだと思います。同じぐらいのレベルの子で地元の公立中学校に通っているケースも見ているので、「インターナショナルスクールに通っていなければもっといい状態だったはずなのにな~」と比べてしまうことがあります。一度落ちた日本語力を復活させるのは、(私は)かなり苦労します。
国語力をどう上げるのか
彼らの国語の成績を何とかするのであれば、やはりまずは日本語力を上げて行かなければなりません。もちろん国語の成績だけではありませんよ。国内の入試に向けて勉強するとなると、参考書も試験もすべて日本語です。それらのことを考えて、語彙力や漢字力はもちろん、お子さんによっては主語・述語・複文・修飾語などの文法構造も少しずつやっていく必要があります。ですがこれらの部分って本当は親子の会話、テレビ、友人、授業、その他の大人、マンガや読書などから自然と学ぶことが多いところです。これが母国語たる所以だと思います。それを、親でもなく学校の先生でもない第四者?が週2とか週3の限られた時間で「何とかする」ことになります。その中で取り組むべきは、大きく分けると以下の2つであると考えています。
①日本語で、大人と、双方向の会話をする。
インターナショナルスクールに通うということは、家庭(親子の会話はもちろん、テレビもパソコンもゲームも家庭学習でさえも)・学校・友人関係において、日本語でのやり取りが圧倒的に少ないという環境になります。そこでまずはしっかりした日本語を話す大人、お子さんが心を許す大人(自立期に入ってくると親や学校の教師とは話さなくなるのは世界共通ですね)と会話を多くすることが重要になります。そしてこの会話は、一方通行ではないことが重要です。親や学校の教師の話は、お子さんの年齢が上がれば上がるほど一方通行になることが多くなります(もちろんそんなことがないように配慮されている親御さんもたくさんいらっしゃいますけどね)。そしてテレビもマンガもネットも基本的には一方通行です。一方通行では「ちょっと待って。それ、どういう意味?」「おれはこう思う」といった双方向のやりとりができません。会話をするということはこの双方向で話すことが前提で、普通は特に気遣いをせずとも成立しています。しかしこれがなくなると、個々の学習内容についての深い理解はもちろんのこと、過去の知識や近隣の知識を総動員して根拠ある推論を立てる、それを他者に示してブラッシュアップする、などの行程が未熟なまま加齢していきます。そしてこれは英語でも同じだと思います。
ちなみに、お子さんが心を許す親御さん、よく話すほうの親御さんが英語を母国語とされお子さんと英語で双方向で深いお話をされている場合は、お子さんも英語を母国語とする頭脳になっている可能性が高いので、塾や家庭教師で「日本語を母国語として強化すること」はあまりお勧めしませんよ。日本語が第一外国語になっている状態です。バカロレア認定を通して海外の大学に行く、などの選択肢(つまり英語を母国語とするが日本に長く留学している、というような立ち位置)の方がお子さんにとっては有利かと思います。この辺りはよくよくお考えになられて慎重に決めてくださいね。
②指導者がいる所で、適切なレベルの問題を、丁寧に多く解く。
国語が極端に弱いから国語の問題をたくさんこなそう、というのは大事です。でも日本語での語彙力はもちろん思考力もそもそも低い状態ですので、やみくもに国語の問題を解いても、問題文も解答解説も意味が分からないと思いますし、「やっていれば、いつかわかる」は無責任ですね。問題集の選び方からして適性を考えないといけないですしね。さらに言えば、どのような能力配分で、どの部分が足を引っ張っていて、どんなストロングポイントがあるか、全体的にどの学年レベルか、などの診断は最低限必要かなとは思います。これらのことは指導者の下で細かく指導を受けるべきだと感じます。本当は親や先生などの大人との会話で培っていくべき能力なのですが、それができない分、あるいはもう間に合わない分、ほかの誰かにお願いする、ということになります。ただ、色々な専門家・指導者がいらっしゃるので、どれが正しい・どれが間違っている、と私が確定的にいうことは難しいですけれども。
私の場合は、「状態を把握」したあと「基本に帰る」「丁寧に説明しそれを積み重ねていく」「生徒が弱い所を優先的にしっかり強化していく」が大事だと思っています。インターに通う生徒に多い傾向は、まずは語彙力の貧しさです。漢字検定を受検している生徒も多いですが、「受かればいい」「そんな熟語使ったことも見たこともない」「漢字は書けるけど意味は知らない」というケースがものすごく多くて・・・。読書習慣がないことも強く影響していると思います。ですが語彙力は一朝一夕では向上しませんから、少しずつレベルアップですね。問題文に出てくる意味不明な言葉をしっかりピックアップです。もちろん設問になくても「この言い方って、筆者は嫌がっている?喜んでいる?」「この部分を別の表現で言い換えて」などの思い付き問題も出したりします。そのような話から「なぜかと言いますと~」と説明が始まって、生徒は「いや、こうじゃないの?」等の意見のやり取りが始まります。これが大事だと思っています。
お勧めしないことをいくつか…
インターの生徒の国語力向上を目指して提案されることはたくさんあります。でもその中でそれほど効果はないな~、意味がないな~と感じているものも4つほど挙げておきます。
①「読書しなさい」・・・読書は国語力アップには非常に効果が高いと思います。ですが以前から、読書習慣はあるが国語力がぱっとしない、という事例が散見されまして、ずっと不思議に思っていました。しかし最近、その原因は「強制されている読書」だからなのではないか、と感じています。つまり面白くない、あるいは意味が分からない、情景が思い浮かべられないんですよ。小3の教科書で既に意味不明な状態のお子さんに、武者小路実篤の「友情」を読ませても多分何も楽しくはないと思います。「友情」を楽しく読書できるにはいくつかの条件がありまして、っていう話です。その条件を全くクリアしていないのに、なんのヘルプも入れずに指示して放置、は可愛そうですよ。そんな読書をするくらいなら、しっかり作られたマンガやアニメ、ドラマの方が(国語力向上には)数段価値があると思います。最近のマンガなどは本当にストーリー展開や時代考証とかしっかりしていますからね。
②「合格すればOK」の漢字検定・・・上にも少し書きましたが、漢字検定を取ること自体は良いことですよ。でも、それと国語力、特に読解力に直結するか、という点については、勉強の仕方で決まると思っています。例えば「ケンシン」という言葉を漢字に直しましょう、となると「献身」「検針」「健診」などの熟語が出てきますが、それぞれの意味が正確にわからなくてもなんとなくで正解することもできます。もっと言えば漢字検定5級などは合計で7割取れば合格です。ですが国語の問題文では小6や中1にもなると、「献身」という言葉が何かの比喩や象徴として使われることが出てきます。こうなるともう意味不明です。漢字が書けても、読解力とはかなり遠い能力だと思います。漢字検定さえとっておけば何とかなる、はもはや神話です。1から熟語の意味や文章内で使われている象徴の説明から入らないといけません。
③レベルを上げた問題集・・・インターの生徒に限らず、生活経験や色々な知識の乏しいお子さんは存在して、こういう言い方は良くないですが「これも知らないのか~」はよくあります。もちろん心の中で言うだけで、生徒には絶対言わないようにしております。このような状態に陥った時、「じゃあこれをやりなさい、これさえできたら大丈夫だから、しっかり解答読みながらやってね」などとレベルの高いもの、ただひたすら暗記事項が並んでいる「面白くない」もの、を渡す指導者もいます。これは個人的には逆だな、と思っています。「これも知らないのか~」に出会ったら、それはお子さんのスウィートスポットのヒントを得たと思うべきです。スウィートスポットというのは野球用語で、バットにおいてボールが最もよく飛ぶポイントのことです。効果的な学習条件の1つに、「学習者にとってちょうどよい難しさ」というものがあり、「このレベルも無理か」となった場合、彼のスウィートスポットはかなり下にあると考えるべきです。劇的に難しいものをヒィヒィ言いながら根性でやるよりも(それが大事な時もありますが)、「お?これはわかるぞ!」「おれ、できるじゃん!」と感じながら進めて行く方が効率が上がることの方が多いですね。中2でも小3の教科書が読めないなら思い切って小2まで下げるべきです。小2の問題集を瞬殺で片付けてから徐々に上げていくほうが、中1中2の問題集をするよりメンタルの消費が少ないと思います(もちろん、この手法は「勉強をそこそこ習慣的にやっていること」が前提です)。
④集団塾や自習スタイルの塾
国語の成績を上げようという事で塾を考えるのは、自然な流れではあると思います。ただ、語彙力が不足、学年相応の国語力がない、複文が読めない、読書習慣がない、事前知識や心情理解がかなり不足、等の状態ですと集団塾や自習スタイルの塾は対応しきれないと思います。これらの部分は個別で指導するからこそ効果が出てくるところであり、集団塾では説明しきれないですね。本来は親御さんとの関係の中で培われてくべき所が多いと思っています。自習スタイルの塾ならなおさらだと思います。お子さんが分からないところをピンポイントで、(出来れば)すべて、本人が分かる言葉で、個性や状態を細かく把握している大人が半年~数年継続して対応するからこそ日本語力も追いついてくるという印象です。
まとめ
インターナショナルスクールに通うことは「英語力が上がる」等のメリットがある反面、「国語力が落ちてくる」というデメリットがよく指摘されます。その弱った国語力を元に戻すために必要なことは
①日本語で、大人と、双方向の会話をする。
②指導者がいる所で、適切なレベルの問題を、丁寧に多く解く。
という2点が重要です。
また国語力をアップさせるときによく言われる「読書をしなさい」「とりあえず問題を多く解けばよい」などの手法は、私の経験則ではありますがあまり効果がありません。本来、国語の基礎力は双方向の会話を通して向上する部分が大きいと思います。ですからインターナショナルスクールに通うなら、日本語力向上のきっかけとなるそれらの機会をできるだけ多く、学校外で保証することが大事になってくるでしょう。今からでも遅くはないですよ。子どもには無限の能力があり、頭も非常に柔らかいですから適切な環境を整えればすぐに適応してくれます。ただ早ければ早いことに越したことはありません。どうか日本語を捨てる前に、そして進路の選択を狭めない為に、日本語力を復活させる手立てをいくつかお試しください。