英語の勉強と英検対策は別もの

2023年1月2日

はじめに

最近、英検を取る生徒がとても多くなりましたね。私が小中学生だった頃は「英検なんて一部のエリートが取るもの」「何それ美味いの?」みたいな存在でしたけどね。今後は社会が一層国際化するでしょうし、現実として「英語のいらない大学・会社は基本的にない」ですからね。数学を課さない大学はいっぱいありますよ。だから英検を低年齢時から挑戦することはいい傾向だと思います。しかも私の担当する地域では高校入試を受ける時点で「英検を受けたことすらない」というお子さんは、もう2割もいないのではないでしょうか。もう「小学生で英検を受ける」というおうちが増えてきています。英検はとても身近になってきことは、これからを担う子どもたちの基本的な学力が上がり、それを証明する手段が増えてきたことを意味します。

最近目立ってきた「ニュアンス解き」

ただ、この傾向が強くなりすぎて「ちょっとヤバいなぁ」と思う現象もたびたび見ています。というのも、「英検さえ取っておけば英語はできる」と思って、英検対策本ばかりやって合格するお子さんが多くなってきたことです。その結果「なんとなく」でそこそこの点数を得点できるようになります。この「なんとなく」で解くことはよく「ニュアンス解き」と呼ばれるらしいのですが、以前よりも明らかに増えてきた感じです。このようなタイプを全て全否定しているわけではないです。特定の場合(高得点が必要であるとか英作文が必須とかハイレベルなところを受ける等)にかぎり、かなり不利に働きます。ただ傾向として早くから英検に取り組むお子さんは進学に対して意識の高いご家庭が多いので、やはりいい大学を目指すことが多くなります。それらのいい大学はこのような「細かい英語」を問うことが多く(すべての大学ではありません)、ある頃から急に英語が足を引っ張るようになります。これが今回の記事を書く発端です。

英語の3側面

英語にも3つの側面があると考えています。1つは身近な英語、1つは得点できる英語、そして資格としての英語、です。このあたりで思う所を少し。

身近な英語とは

英語に対して恐怖・劣等感がある日本人、多いですよね。まあ私も人さまに言えたもんでもありませんけど。でも、「簡単なコミュニケーションを英語で取れること、英語のメニューや看板に恐怖感を感じないこと、海外に気楽に行く感覚」などはこれから大事ですよ、英語が身近にある生活を送ることが、将来において選択肢を広げますよ、的な話です。つまり、英語や外国人に抵抗を感じないお子さんは有利ですね。ご家庭が英語に身近な環境であればなおのこと抵抗を感じないですね。実際の所、昨年から全国で使われている中学校英語の教科書も「英語は構えてやらなくてもいいんだよ」的なメッセージが感じられます。中1のアルファベット確認の直後に、いきなり会話形式の文に入ってwhatが出てくるわ、be動詞と一般動詞出てくるわ、とどめに今まで中2の中盤で習うはずのto不定詞が出てます。旧式の英語勉強法で学んできた身としては少し不思議な感覚でした。つまり、ビビりました。しかしこの学び方は世界的には主流のようです。今までの日本の学び方が超古い感じだったみたいです。ということで、英会話なんて「堅苦しく文法を1つ1つ理解して・・・」みたいな「まどろっこしい学び方」をやめて気軽に楽しくやろうよ、という方向になって来ているのかもしれません。英語の入り方はそれぐらい敷居をさげようとしているのかもしれません。こういう英語力・英語感覚はこれからの若者にはとても大切です。例えばインスタですぐ海外の生徒と仲良くなれる子がいます。英語は気軽で身近なんです。軽い英語ができれば世界中と友達になれますね。この部分はニュアンス英語で充分だと思っています。ただし、この「身近な英語」を入り口とするとき、その後の英語はやはり環境が整っていなければ奏功しないと思うのです。

得点できる英語とは

身近な英語は感覚で理解するので、語彙力や文法的な裏付けがなくてもまあ意味は通じます。でも例えば「三単現の主語なら一般動詞にsがつきます、でも動詞の前に助動詞がつくとそのsはつきません、ただし動詞の前が副詞ならsはつきます、さらに助動詞がhave toなどの動詞を伴う別の表現に変わるとhaveの方がhasになり元の動詞は原型になります、でも過去形はつきません」、みたいな「旧式」とも言われるような一連の流れですね。この辺をしっかり勉強して丁寧に理解しているか、で「国内の入試や模試の多く」において得点が大きく変わるのは事実です。ニュアンス解きに慣れてしまうと、このあたりで苦戦しますし、教える方も判断に迷う所です。「なんとなく言ってることがわかる(気がする)」レベルでは対処できない時があります。確実に得点できる英語はやはりまだしばらくは文法を日本語で順を追って1つずつ積み上げて行くべき、と思っています。問題の作り方がそうなっている所が多い印象です。もちろん経験でカバーできる(つまり英会話をやっていれば大丈夫)という説もありますが、日常会話に正確な英語を話す人とのコミュニケーションがある、というような「経験の量と質が保証される環境」にいて初めていえることだろうと思っております。日本のように週に3~4回英語の一斉授業、しかもレベル分けされていないクラスで日本人による日本語での一方通行の授業、という環境なら、経験の質と量が保証されているとは言い難い状況だと感じます。話を元に戻しまして、身近に話せる英語能力と日本国内の英語のテスト(定期テスト・模試・入試など)で得点できる英語能力は、実は同じものではありません。英語を母国語とする方が英検2級あたりを受験されてよく不合格になるのも、これとよく似た原理かな(日本国内の試験でよい点をとるのは日本式の英語の点の取り方を学ぶべき)なんて思います。

資格としての英語とは

自身の英語能力や英語学習歴を示すために、英検をはじめとした検定はたくさん存在します。資格や検定ものは持っていれば確実に箔(はく)がつきます。大学共通テストも英検の所有級で得点が決まると言う話がありますし、高校受験も英検を持っていると有利なのは間違いないありません。しかし英検取得に向けて対策本をガンガンやることで、基礎となる学力が定着していなくても「多分これ、なんとなくこれ」で合格できるケースもあります。便利ですが、国内での試験で得点する能力が必要な場合は少し(あるいはかなり)配慮が必要な時があります。

偏差値の高い高校・大学に入るのであれば3つすべてそろっていることが理想です。検定だけいいものを持っていてもその「英語力」が入試(細かい英語力を問われる)で反映されるとは限らず、やっぱり1からちゃんとやらないとね、と決断する時が来ます。


よくある落とし穴

これを具体的な、よくあるケースで紹介します。「英検3級を持っているという小学生。次は準2級だね、ということでずっと他塾さんで対策をしているんですが全く受からないんです。」というご相談。3級だと軽い英会話ができるレベルですのですごい小学生やなと思いながら担当してみると、ペーパーテストやリスニングは全部当てずっぽうです。「多分これ」で結構な正答率なんですよね。英会話も単語ばかりで、ときおり意味不明な返答があります。ライティングはもう文法的なミスのオンパレード。言いたいことは、かなり想像を膨らませてなんとかわかるかも、というレベルです。彼らはニュアンス解きの名手です。進学への意識の高いご家庭ですので、IQが高いお子さんも多く、彼らは偏差値の高い高校・大学を目指すことになります。しかしながら、実際の英語力や英語での得点力は想定されているものよりかなり低いという現実を何回も見てきました。多くの方が「箔をつける(推薦で有利にする)ため」「本番の入試で得点を取るため」という目的で学生時代の英検取得に励んでいるはずですが、そういう解き方で英検を取れたとしても入試本番で得点できるかな~通用するかな~という悩みは尽きません。もちろん、そのレベル(ニュアンス解き)で充分、という学校もたくさんありますよ。ニュアンス解きでいいかどうかは「志望校による」としか言えないのですけどね。ちなみにそういうやり方(ニュアンス解き)でも英語力は伸びる、と謳う所もたくさんあり、私にはできないことなのでそれらを否定する意図は全くありません。

ニュアンス解きのメリットとデメリット

ニュアンス解きのメリットはやはり何と言っても、気軽なことでしょうね。どの勉強でもそうですが、言語の学習は反復練習が特に必要だと思います。ですが、ニュアンスさえつかめば、検定ものは選択肢をかなり絞ることができます。特にIQの高い子は勘が良いので勉強時間が大幅に減らせます。本来ならしっかり勉強することによって問題の選択肢4つ5つの意味をすべて理解することができるようになりますが、その必要がありません。その結果、「多分、b」で正解になるんです。しかし、ニュアンス解きが足を引っ張るのは、「高得点勝負で記号問題ではない時」です。中堅の大学・高校は5~6割程度を得点すれば合格しますし、マーク式の模試や共通テストは記号式なので、ニュアンス解きでまあ対応可能です。しかし「英作文、和訳、単語を書け、適切な形に直しなさい系(このあたりはニュアンス解きで来た生徒は本当に苦手です)」でなおかつ合格目安が得点率80%以上(共通テストだとベネッセ模試でSゾーン、沖縄県の県立高校だと4Kや地域トップの伝統校)などの条件がつくと、英検3級を持っていても英語がリード科目にならないばかりか足を引っ張る可能性もあります。もっと言えばベネッセでSゾーンを目指す生徒にとって共通テストは「9割取れて当たり前」ですし、県立高校ですと英作文も「適当な形に直せ」も「単語を書け」も結構出てきます。

どうすれば

英語の勉強と、英検を取るだけの勉強はちょっと違います。後者はニュアンス解きでOKだと思います。まずは志望校がニュアンス解きで対応できるレベルかそうでないかを判断してください。対応できるのならニュアンス解きをもっと洗練するのも良いかと思いますし、単語・熟語を覚えるだけで何とかなるかもしれません。しかしそうでないなら選択肢は大きく2つです。時間があるのであれば、やはり文法をしっかり見直した方が良いと思います。英検を取れるレベルに達しているのであれば、通常の生徒よりもはるかに短時間で文法力も身につきますよ。しかし時間がない場合は、1から英語の文法力を鍛え直す労力とほかの科目で合格点に寄せる労力とを比較して、優先順位を決めるべきでしょうね。結果、諦めることも視野に入ってきます。この判断は生徒自身が決めるよりも、専門家にお願いした方がいいかな、とは思います。学校の先生でもいいですが、学校の先生は教科指導(一斉指導)のプロですので、各教科・科目内の領域の得点バランスを見た上での成績全体のグランドデザイン、そして経過チェックまでできるとは限らないです。という事で月並みな結論、多くの専門家の意見を聞いてみてくださいね。専門家に話を聞くってどういうこと?ということであれば、身近な方法は学習塾に相談に行ってみて下さい。5校ぐらい行って体験を受けてみて同じ相談をしてみたらいかがでしょうか?入会営業が激しいかもですけどね。親身な塾なら懇切丁寧に説明してくれますよ。あと最近はチャットやメール、ZOOMで教育相談を受けてくれるところも有料無料であるので、そこを探してみてもいいかもですね。

まとめ

英語の勉強と英検の勉強は違うのではないか、という話をしてきました。切り口は「ニュアンス解き」で済むかどうか、という点です。文法をしっかり勉強して積み重ねて英語ができるようになった生徒は英検はすぐに取れます。しかし英検3級を対策本のみで頑張って取ったとしても公立高校の入試をできるかというと、少し厳しいかも、です。小学生の時から英語を勉強することは確かにかなりのアドバンテージとなります。しかしこのニュアンス解きの能力だけ磨いて英検を取得したお子さんは、やがて辛く長いスランプに苦しむことになります。ぜひ慎重に導いてあげてくださいね。やはりゆっくりでもいいので英語を1から丁寧に勉強したほうが、3年後の結果は良くなると思いますよ。







個別指導

Posted by tokashiki