成績向上に関わる5人の大人

はじめに

あるとき、私の所に内地(沖縄では沖縄県以外の地域を内地と呼びます)の超有名中高一貫校をやめて沖縄に帰ってきた、という生徒が相談に来ました。学校の名前を聞いてひっくり返ったんですが、さて成績の状態はというと、もう一度ひっくり返りました。よくよく話を聞くと・・・。

先に結論

沖縄でもよくある話なんですが、
「新しい環境ではこの生徒に関わる大人が少なすぎる上に、本人の精神的な成熟が遅く、環境的にはこの生徒にとっては最悪ともいえる所に放り込まれたな」
と強く感じました。
この生徒は自宅を出て中1から寮生活です。
しかも部活も入っていませんでした。
すると、関わる大人がグッと少なくなり、親御様と学校の連絡も薄くなってしまう、という状況になるるのは想像できると思います。
そもそもこの生徒は小学校の時はバリバリのスパルタ塾出身で、指導者の凶悪な指示(笑)をしっかり守る従順さ(ひょっとしたらお母様が流行りの「狂気」を駆使してついて行かせていたのかもしれません)でそこに合格したような印象です。ですから、その凶悪な指導者もいなくなり、狂気で迫る母親もいなくなり、もちろん主体的な学習態度は形成されていない、となればその後の姿は容易に想像できますね。一般的にエリート学校は、昭和的なスパルタ式を維持しているスタイルと、「もう自由にやりなさい」という放牧スタイル(と勝手に呼んでいます)に分かれます。この生徒の行った学校はバリバリの「放牧スタイル」で、親御様の下を離れて暮らしているので、もう束縛・強制する存在はありません。生徒本人は、勉強はしなければならない、でもどうにもわからない・進まない、という負のスパイラルに陥ってとうとうメンタルに来たようです。そこでスパッとあきらめた親御様も勇敢だなと強く思います。
そこでですね、成績向上が著しい生徒は、周囲の大人(ひょっとしたら友人なども含む)が知らず知らずにうちに色々な役目を担っているのではないかと考えました。その役目を大きく5つ挙げてみました。

成績向上に必要な役割は以下の5つ

①チェッカー

学習したこと、指示したことなどをチェックすること。毎回の小テスト(前回までの学習内容を理解・復習しているか)や暗記テスト(暗記は時間を掛ければ必ずできます)、宿題チェック(宿題は練習量の確保がメインの目的です、練習量をこなさないと基礎学力も応用力も身に付きません)をチェックすること、そしてやっていない生徒、点数が取れなかった生徒に罰則を与えたりすることもこのチェッカーの仕事ですね。放牧スタイルの学校はこのチェッカーすらいないですよ。放牧スタイルの学校が悪いわけではありません、そこに合わないのに選んでしまった親御様及び本人の責任です。

②ティーチャー

文字通り「教える人」ですね。これは集団授業でも個別指導でも必要となりますが、生徒の年齢や学力レベルが上がってくるに従ってどちらも役割が変わっていきます。年齢が低い場合は文字通り「こうやって解くのですよ~」的な見本を丁寧に示すことがメインです。しかし年齢が上がると、その見本になるような解き方やアプローチはもう解答・解説に載ってますからね。それをわざわざみんなの前で「いいか~見とけよ~」と示すのは時間の無駄ですね。年齢が高い生徒への授業は問題の構造を説明したり、出題者の意図を説明したり、派生問題を提供したり、と「生徒の引き出しを増やす」アプローチが必要だと思います。またさらに必要なのは、「ゴールはここですよ」と示すこと、具体的に言うと「〇〇大に合格するには現状でこのレベルまで上げておきましょう」を提示する事ですね。おまけで言っておくと、集団授業特有の超強力なカンフル剤を使えるティーチャーも存在します。「クラスのモチベーションを上げる事」も年齢が上がるほど効果が大きくなるような気もします。実際にそういうクラスと担任の先生に関わっていたことがあり、奇跡が起きる現場にいたので、「こうやって奇跡が起きるのか」を体感しています。あれはすごかった~。公立高校のクラス平均偏差値が半年でそのクラスだけ8上がるとか、まあ有り得ないっすよね。これは集団指導の教員の力量次第です。ちょっと本題からズレてしまいましたけど。

③アナライザー

なんでいちいち英語使うねん、といいたいのは分かります(笑)。私も薄々感じています。ま、「分析者」ですね。日頃の小テストはもちろん、模試成績や答案用紙を見たら弱点と長所、持ち味などがかなり詳細にわかりますし、原因を探ることで今後の展望も見えてきます。またベネッセ模試はメンタル状態もアンケートを取っていますのでそれも参考にできます。成績結果からそれ以上の情報を生徒に伝え、どうすべきか話し合っていくのも分析者の仕事の1つですね。

④デザイナー

多くの生徒にとっての最終目標は、「〇〇中・高・大に合格する事」と設定しているでしょう。そこでこの生徒の現状を分析者などからできる限り正確に把握し、この最終目標の試験日までの間どのように進めていくか、というグランドデザイン(と勝手に呼んでいます笑、大計画のことです)を描く人が必要です。そしてその計画を長期・中期・短期の計画をティーチャー、チェッカー、サポーターに伝える役割です。もちろん生徒本人とも目標を共有します。この場合、無理な到達計画や学習速度、生徒のメンタルには敏感に気遣ってあげなければなりません。集団授業ではそのような計画を学校側が準備しており、全生徒がそれに合わせなければなりませんし、それに対する各生徒へのフォローもそんなにありませんよ多分。この部分は季節に1回、15分の三者面談で効果を出すことはまあ難しいかなあと思いますよ、高校教師をやっていた経験からすると。

⑤サポーター

支援者のことですね。お子さんの受験を取り巻く環境は「無条件に誠心誠意で邪心なく応援してくれる人がいる、傷ついても非難されることなくそのままを受け入れてくれて帰る場所がある」、といえますか。「そんなもん当たり前や」と思っているかもしれませんし、親御様自身もそう心掛けているかもしれませんが、お子さんはそう感じていないケースをよく見ます。それは強烈な表現を使うと、「指導者や親御様の独善」とも言えます。よくある「君は優秀だから頑張らなければならない、できるはず」という期待は、純粋に帰れる場所にはなっていないと思いますよ。エリート育成や早期教育において初期段階の強制は絶対にだめとは思いません。才能が見いだされたのに放置しておくのはそのお子さんにとっては「損かもね」とは思いますし、気づいてしまった第三者の立場の大人としても「もったいないな~」は強く感じます(余計なお世話かもしれませんので私は強く踏み込まないようにしていますけど)。しかも最近は「普通の子」でも早期教育でエリートになれたなんてケースはいくらでもあります。ただ、お子さん自身が向上や有能感、自己肯定感を感じられないまま、束縛と無駄を強制されているといつかガス欠を起こしますね。このような文脈から、サポーターは健全なメンタル状態を維持するために最も大事な存在です。特に年齢が低い場合は親御様が最高の支援者です。「お母さんが超喜んでくれた」と分かってもらう事は、お子さんにとってはプレステよりうれしいご褒美です。物によるご褒美はやがて効果が薄れますが、精神的なご褒美は効果が薄れるないばかりかどんどん向上心を加速させますよ。プレステの方がうれしいというお子さんは、親御様から精神的なご褒美はもうもらえない(いらない)と感じる年齢かもしれませんね。でもちょっと対策はできるかもです。

この生徒はどうだったか

上記のような心ある5人の大人が周りにいると成功する確率が高くなると思うのですが、この生徒の場合はどうだったのか・・・。もうなんとなくわかりますかね。パッと見た感じではティーチャーしかいないですね。この生徒と話をする大人がもうほとんどいない、ということにお気づきだと思います。自立的な学習方法を身に付けて自己肯定感やその領域に関する有能感・興味関心が高いのであれば、寮生活でもグングン伸びていくとは思います。しかしこの生徒の場合、大人と話すのは、授業中に少しあるかも、面談で少しあるかも、廊下でのすれ違いのときに少しあるかも、です。誰も彼のことを一人の生徒として、状態を正確に把握できていません(学校関係者には怒られそうですが)。自立期(反抗期)だから大人と話をしないもんでしょう、それでいいんじゃないの、普通じゃん、なんて声も聞こえてきそうですが、エリートになるならこの状態は非常にまずいと思います。どこかの項で「部活やりまくりで親・教師との会話が減った結果、学校の教科書すら読めなくなった」という話をしたと思いますが、この生徒が私の所に来る頃にはよく似た状態になっていました。全国屈指のエリート校に合格したにもかかわらず、ですね。関わる大人がいるって大事だな~と心から再認識させられましたし、油断している自分にもう一度喝を入れられた気がしました。

親御様にできる事

合格のために何が必要なのかについては、親御様はよく考えていらっしゃることと思います。ただ、その環境がお子さんにとって良い環境であるか、の客観的かつ最終的な判断は小中の間は親御様の仕事です。偏差値の高い学校は「入ってしまえば自動的にいい大学につながるエレベーター」ではありません、特に今は。落ちこぼれがバンバン出る構造になっている印象ですよ。エリート校は以前からそうでしたが、最近は極端に上位層だけに目が行ってますからね~。
しかし小学生だったお子さんもやがて親の手を離れて次のステージに上がることになります。しかしこれは親御様の仕事がなくなるわけではありません。お子さんに対して面と向かって仕事をすることがなくなるだけで、見えないところでやっておく仕事は沢山あります。その1つが、お子さんの周りにこの「5人の大人を確保する事」です。もちろん5人である必要はありません、何人かは複数の部分を担える方がいらっしゃれば少なくていいと思います。中学校に入ったらもう親御様にチェックされることは拒否しはじめるでしょうから、誰に理解度をチェックしてもらうか。模擬試験の結果などを親御様に見せなくなるでしょうから、誰に見てもらい分析してもらい、本人はどう考え精神状態はどうなっているか、等の情報を誰から得るか。具体的には担任の先生だったり、塾の先生だったり、心を許す親戚だったり、兄弟だったりとなりますね。もちろん親御様が情報を得るということが大事であれば、「お子さんから嫌われていない」ことが重要なポイントにもなりますし、そもそもお子さんから「親には言うな」と口止めされていれば、情報を事細かに報告されなくても安心して預けられる存在が必要です。お子さんがエリート街道を突っ走っていくためにも、迷えるお子さんに伴走してくれるこの5人の大人を検討されてみてはいかがでしょうか。そのための情報は惜しみませんのでいつでもメールくださいね。

個別指導

Posted by tokashiki