IQは伸びるのか
最近の研究では、
・IQ(理解の速さ)の初期値だけ遺伝でほぼ決まる
・10歳くらいまでの環境や本人の努力(あるいは怠惰)である程度変動する
・それ以後も鍛えれば伸びる可能性はある
・鍛えなくなると元に戻る
等の知見が主流です。
先に結論:IQはかなり伸ばせる、と考ています
つまりIQは伸ばせる、ということです。
朗報ですね。
「ただし」、という条件が2つあります。1つは「お子さんのIQが伸びるような環境を意図的に整備できる親(大人)」が必要という点、もう1つは伸びると言っても50も伸びることはあまり現実的ではないという点の2つです。
1つ目にあるように、親御さんや周囲の大人の一人が「お子さんのIQが伸びるような環境を意図的に整備できる存在」なら、お子さんのIQが高くなる確率は高くなります。しかし実際にはそのような親御さんは少なく、また整備できる大人がいたとしても親ほどの影響力は持てないというのが現状です。結局親が育ったように子どもも育つ、その結果親の能力や世界観・価値観をそのまま引き継ぐような形に見える、と考えられます。このことでよく引き合いに出されるのが、里子や養子に出された子ども、一卵性双生児研究などですね。生みの親と育ての親が違う時、子どもはどう育つのか、遺伝子の同じ者が異なる環境で育った場合どう変化するのか、等の研究です。海外では里子や養子縁組は比較的多いそうで、犯罪者の子どもでも良い環境であれば立派に育つという事例はいくらでも存在します。逆のパターン、親御さんはすごい方だけどお子さんがかなり残念な感じ、というケースは日本でもよく見られますね。ただし、一卵性双生児の研究では、多くが「氏(うじ)より育ち」(「誰の子か」、よりも「誰に育てられたか」が重要である、ということ)を示すものが多いものの、それを覆す事例もいくつか出ているようで、まだ結論は出ていないということなんでしょう。
まずさ、IQって何?
まずよく言われるIQって何?からですね。
知能指数(ちのうしすう、独: Intelligenzquotient, 英: Intelligence Quotient, IQ)とは、数字であらわした知能検査の結果の表示方式のひとつである。知能が高いほど数字が大きく、知能が低いほど数字が小さくなる。知能指数の算出には2種類あり、「生活年齢と精神(知能)年齢の比」を基準とした従来の方式と、「同年齢」を基準とした方式がある。現在では従来の方式はあまり使われなくなりつつある。また、検査によってはより細かい「言語性知能検査」と「動作性知能検査」も決定する。「同年齢集団内での位置」から算出される相対評価である。入学試験合否予想システムに使われる偏差値と同じで中央値と標準偏差によって算出される。知能指数は標準得点で表され、中央値は100、標準偏差は15前後で定義されている。100に近いほど出現率が高く、100から上下に離れるに従って出現率が減っていく。分布はほぼ正規分布になり85–115の間に約68%の人が収まり、70–130の間に約95%の人が収まる。従来のIQは「精神年齢 ÷ 生活年齢 × 100」の式で算出される(後の「種類」参照)。知能指数は100に近いほど出現率が高い(人数が多い)。50–70は軽度知的障害、35–50は中度知的障害、20–35は重度知的障害、20未満は最重度知的障害とされるが、40未満を測れない検査も多い。
Wikipediaより引用
難しい言葉が並んでおります。結局のところ、10の説明をして10の理解の出来る人がIQ100(いわゆる平均値)、10の説明で20も30も分かる人が高いIQを持っているということですね。在籍している集団のなかで40人に1人の頭のよさ(クラストップ)ならIQ130ぐらい、6人に1人の頭のよさ(クラスの上位5~6人)ならIQ115ぐらい、という感じです。2000人に1人だとIQ150です。IQはペーパーテストで計測され、保健所などで受験可能ですよ。
20~30年前まで、IQは
・遺伝子で決まっている(親が優秀なら子も優秀)
・伸びたり落ちてきたりするものではなく、一生変わらない
・10歳までに決まる(スキャモンの発育曲線)
・IQと学歴・職業・収入はほぼ比例する
・IQの高いことが受験における有利さを決定づける
等と考えられいました。私も30代半ばまでそう考えておりました。IQ崇拝者がいまでもかなり残っているという印象は受けます。
個別指導に向き合う者として、確かにIQが高いことは有利さの1つではあるとは思います。もっと突っ込んだ言い方をすると、IQの高い子を指導する時、「とてもラク」なんです。通常15分かけて説明するところに3分の説明で到着してくれる上に、分からない所となぜ分からないのかを生徒本人が説明できるからです。ただですね、この事例からもなんとなく察しが付くかもしれませんが、優秀なお子さんを見ていると、IQが高いから優秀になったのではなく、「真面目さ、ストレス耐性、やりきる力(最近はグリッドと呼ばれ「成功に最も大事な能力」として注目されてますね)、生活体験の経験値、コミュニケーション能力、好奇心の多さ、非認知能力、語彙力、読解力、その部分を学ぶ以前の基礎学力、本人のやる気、保護者の姿勢、環境」などとの相乗効果で成績が優秀になったのではないかと感じることが多いですね。別の言い方に変えると、「優秀に育つ為の要素の多くがしっかり発達した状態であり、IQが高いのはその恩恵の1つにすぎない」、ということです。ですので「IQだけを伸ばせば成績は上がり優秀になり収入が高くなる」という考えには少し懐疑的です。
お子さんの環境を意図的に整備できる親って?
親御さんの育児方法においては、積極的にお子さんの環境に配慮して意図的に整備するタイプと、自分が育ったようにのみ育てるタイプに大別できます。もちろんどちらが正しい、とかはありません。前者は教育学や心理学の知識や実践経験がある、またはそのような環境で育てられてきたため、トライアンドエラーを繰り返しながらお子様の成長に適切かつ積極的に、かつ長時間・長期目標を持ちながら関わることのできる親御さんのことです。このような意図的に環境を整備しようとする親御さんのもとでは、お子さんはIQが伸びる可能性が高くなると言えるでしょう。
例えば小4の我が子に「読書する子に育ってほしい」と願う時、どんなアプローチを試みますか?
①読んで欲しいと思う本を買って「(自分は読まないが)これを読んでごらん、楽しいから」とアプローチする、あるいは本屋に連れて行って「好きな本を漫画以外で買っておいで」と指示する(しかし親御さんの気に入らない本だとダメ出しをする)親御さん
②子どもの帰宅時間にあえて読書する姿を見せる→これは楽しいと家族団らんのときに話す→父も「それはすごいな、オレにも貸して」と言って巻き込む振りをする→「確かにあれは楽しかったよ、はまりそう」と感心する演技をしてもらう→家族でその本の話を面白く共有する→「なんかあの本を読んでいたらさ、英語を話したくなっちゃった」と英検4級(中2レベルです、すぐ取れます)に挑戦するといって勉強する(振りをする)→苦しんでいる姿を見せやり遂げる喜びを実演する→「私が読んだ本」として本棚を作る→3ヶ月ぐらい掛けてお子さんに自発的に興味を持つように仕向ける
③本を読みなさい、と指示を出す。何を読みたい?と聞く。〇〇ちゃんは沢山本を読むってよ、図書貸出学年3位だってよ、などと比較してあおる。特に反応がなければ叱る・あきらめる。「うちの子は読書しないって」と本人に聞こえるように他者と話す。
積極的にお子さんの環境に配慮して意図的に整備するタイプなら②に近いアプローチ(先の先を読んで行動し、時には演技も入れ子どもの為に親御さん自身が変化する)を試みるのではないかと考えられます。もちろん正解はそれぞれのご家庭の事情に応じて無限に存在します。大事なのは、「どのようなプロセスで目的を達成するか」という計画作成と、「その計画に知識や経験が裏打ちされているか」という点です。もし知識や経験がなくてもそのような情報を得る書籍や掲示板、オプチャ、ネット情報などがありますし、そのような授業をする保護者教室(リモート参加可能)もありますから、諦めるのは早すぎますよ。
IQを伸ばす、となった時、誰の指導を受けるのか?
「IQって伸びるんだ」「じゃあうちも伸ばしてみようかな」となった時、もちろんご自身のみで整備するのは全く問題はありません。でも誰かにお願いするとなると、どうするの?誰に?ということになりますね。実は日本にはIQを伸ばすことを目的としている施設(平たく言うと「塾」)が複数存在します。ここでは具体的に挙げることはできませんが、長くやっている所も新しい所もあります。しっかり吟味して問い合わせているのもいいですね。検索する場合は「IQ]「伸ばす」「知育」などを基本として、「幼児」「小学生」「早期教育」「幼児教育」などのキーワードを入れてもいいかと思いますよ。
ちなみに、もちろんですが親御さんもしっかり勉強なされて(あるいはその施設からの指示やアドバイスを受けて)自宅で実践をする方が格段に結果は出ます。他人に週に2回にお願いするより、世界で最もお子さんのことを愛し毎日状態を見ている親御さんが実践した方が効果が高くなります。(★)
(★)教育実践では、システムやそのベースとなる理論がどんなに優秀でも指導者(それを実践する人)の理解度や経験値、情熱などが低ければ、本来見込まれていた効果が薄まる、あるいは全くなくなるのではないか、と私は強く感じています。私が教員のとき、素晴らしい取り組みが挫折していく一部始終を見てきて、このことを肌で感じておりました。また、この現象を示唆する研究も見られます。お子さんを優秀に育てるという目的をかなえる時、実は親御さんがしっかり勉強して実践するのが最も効率の良い方法なのではないかと感じています。お子さんを最も愛し、期待し、責任を持つ覚悟をもっているのは親御さんだからです。
IQと偏差値の関係
どんな生徒を見る時も「IQを伸ばす」というよりは、持っているIQの本来の姿とIQ以外の要素の状態を見極めなければならいと考えております。
例えば本来のIQの表出を妨げているもの(発達障害等)を取り除くあるいは抑制することができれば伸びていきますよ。というより本来の姿に戻ってきます。
実際にそのような生徒さんにも指導させていただきました。
ただ、かなり時間がかかりましたよ。
またIQは偏差値60ぐらいまでの学校に進むのなら、特に高い必要はありません。
入試はパターンが決まっているので対策を立てて着実にこなしていけば大丈夫です。
高めのIQが必要になるのは偏差値65を超えるあたりから、偏差値が70を超えるところは高ければ高いほどいいと思います。経験上、超難関校は努力だけで何ともならない場面がたくさん出てきます。
逆にIQが低い場合は偏差値が60を超える学校は(申し訳ありませんが)無理、と感じています。
IQは一定以上は伸びないのでつらい所です・・・。
ちなみにその子の国語力が低いとIQが正確に測れず、本来の実力通りに理解力や処理速度が発揮されないことがあると感じています。
そもそもそういうタイプの生徒の国語力は上がるんじゃないかな~と最近思っています。
実際にそういうケースも担当させていただいた経験論ですが。
まとめ
この項での渡嘉敷の考え方は以下の通りです。
・IQは親御さんの遺伝子に関係なく、10歳くらいまでの育ち方で充分伸びる。もちろんそれ以降も伸びるとされている。逆に特に何もしなければ親御さんと同じ程度になる、あるいはどんどん下がっていく。
・IQを伸ばすことができる大人は、親御さん以外にはごく少数の専門家しかおらず、それでもかなり効率が悪い。
・「IQだけを伸ばす」という考え方より、「成績に直結する人柄・特性全体を伸ばす」という育て方・接し方が大切である。
・しっかり勉強された親御さんが「お子さんのIQが伸びるような環境を意図的に整備できる存在」になることが最も効率が良い。
・偏差値が65ぐらいまでならそこまで高いIQは必要がない。
・IQ150等の飛びぬけた才能については、育て方でどうにかなる、という知見はない(少ない)。
どの親御さんにしても、お子さんのIQを伸ばすことそのものは決して目的ではなく、何かの手段であると思います。その本来の目的の方(多くは成績向上や志望校合格)を成就するための手段の1つでしかなく、IQは従来ほど「万能なもの」というイメージではなくなってきていますよ。IQは伸ばせます、しかし成績向上は他にいくつもアプローチ方法があり、お子さんによってはIQ向上よりも手っ取り早く結果が出るものもあります。
まだまだ諦めるのは早いと思いますよ。一緒に勉強していきましょう!