小6なら中受より高受・大受も視野に
はじめに
中学受験は小4から本格的に始めるのが普通、と言われて久しいですね。もっと言えば小4までに読解力や基礎計算力、コミュニケーション力、素直さ、集中力、勉強習慣、自己肯定感、ストレス耐性、自己分析力、お子さん自身が作った目標とその道筋計画、PDCAサイクルを回す能力、などの能力(しばしば「受験適性」などと呼ばれます)を持っていると、かなり有利と言われます。これは早期教育で伸びることが強く指摘されていて、小4でのスタート地点とその後の成績の伸びに直結する印象です。「中受は親で8~9割決まる」というあれの入り口です。ちなみに最近は、早期教育はお子さんのIQ(先天的なもの)を伸ばすことを主眼に置くのではなく、お子さんが生まれた後に親御様の養育能力次第で育成できるもの(後天的なもの、例えば非認知能力など)を身に付けさせていく、という位置づけが強くなってきています。上記に挙げた受験適性は、小4以降に親御様の働きかけのみで身に付けさせたり向上させたりするのはかなり難易度が上がる印象です。自立期(いわゆる反抗期)が始まるので、親御様との距離がどんどん離れて行くからです。ですので小4以前までに身に付けると良い、とされています。
そもそも中学受験希望者がすべて小4で本格的なスタートかと言うと、そんなわけはありません。小6の6月頃にいらっしゃるお子さんもいますよ。この場合、慌てて中学受験の準備をするべきか?私はこのようなケースの場合、「中学受験がエリートになる唯一の方法ではない」「目線を少し長くして『いい大学に入るため、高校受験を見据えた4~5年のあり方』という視点で見直してみてください」「中学受験を経なくても手遅れではないですよ」という情報もお伝えしています。というのは、小6から中学受験対策を始めるのはかなりハンデ・ギャンブル要素・ムダ・ストレスがあるので、あまりお勧めはしない感じです。しかし小6から高校受験・大学受験のことを考えるなら(そういうご家庭は意外に少ないので)かなり有利です、という話です。いい大学に行っているお子さんが全員小4以前に先述のような能力を身に付け、小4以降に中学受験で成功しているかというと、もちろんそんなわけはありません。つまり小4までにそんな意識を親御様が持っていなかったのに、お子さんが小5・小6になってから「本格的に中学受験したい」となるケースも意外に多いですね。そこで彼ら(遅まきながらスタートを切った子ども達)をどうやって成功させるのか、遅まきスタートの方がある意味有利、という話をやりたいなと思います。
エリート先発組のアドバンテージ
小4までに上記のような能力をしっかり身に付けて、いざ小4から最先端のバリバリの学習塾に入ってモーレツに頑張るご家庭を「エリート先発組」としますと、小5以降からエリート街道を意識して準備を始めるご家庭は「エリート後発組」などとなるでしょうか(かなり失礼ですが、言葉の上の話であって他意はありません、優劣や貴賤を意味するものではありません)。一般論で言いますと、「大学入試には中高6年間あるから中学からエリート校に入った方が絶対的に有利」と言われます。実際の所、気合の入っている中高一貫校は中1から高3までの学習内容を高1で終わらせます。その上、公立中学が絶対に触れないレベルの内容・問題まで網羅してくれますし、大学受験に直接関係のない領域は文科省に叱られない程度にさっと流します。さらに教員も友人も学校設備も卒業生もPTAも地域の方々も周辺にある学習塾まで含め、環境・設備・雰囲気などはかなり整備されています。これは大学受験においてはとてつもないアドバンテージだと思います。「こんな有利なのはハイレベル中高一貫校に合格した者だけやで」というのはやはり現実ですね。
最終的な成功確率が上がるエリート後発組は哲学が違う
じゃあエリート後発組が大きく不利なのか?というとそうでもありませんよ。エリート後発組も、「最終目標は大学受験」という点では同じです。しかし小5・小6で「エリートになりたい」と目覚めてしまったなら、「中学受験にこだわるかこだわらないか」という点が「いい大学に入れるか(=エリートになれるか)」の分かれ目の1つです。確かに今から中学受験をするというのであれば、かなり不利ですね。その場合、本来なら3年以上かけて進めるもの(幼少時からの早期教育+小4からのバリバリ受験学習+親御様の養育能力向上)を1~2年でやらざるを得ないですね。しかもその超駆け足で学んだことはその後の受験にはあまり役に立たないかも。このことから、後発組の中学受験はムダやストレスが多く、慎重になるためにも情報を多く持っておいたほうがいいですね。小5~6でエリートになりたいといい始めたとき、親御様が採る選択肢はこの2つが考えられます。
ケース①中学受験に本格的に取り組む
中学受験にこだわるなら、残された時間は半年~1年半ですね(中学受験は12月頭から始まります)。この期間で、本来2年半(小3の2月~小6の8月まで)かけて進める中学受験4教科の学習内容と3ヶ月ほどかけて高める本番レベル対策を終わらせなければなりません。その上、「本来なら小4までに持っていた方が良いとされる諸能力」の育成もした方がいいですし、さらに受験スケジュールを円滑に消化するための親御様の情報集めや進捗管理も必要です。しかしお母様がお子さんに対してこれらを同時に一気に実践するというのは、かなりの試行錯誤・勉強も必要でハードルが高いですよ。お子さんへの負担も尋常ではありません。しかもこれらをクリアすることでやっと「エリート先発隊と同じ土俵に立てる」だけです。
ケース②中学受験はせず高校入試と大学入試を見据える
私が強く言いたいのはここです。中学受験にこだわらないのであれば、「高校受験まであと4~5年ある」「大学受験まであと7~8年ある」「中学~高校の6年間の勉強を7~8年かけてやれば良い」という考え方も可能です。すると、見える景色が変わってきます。今度はこちら側(エリート後発組)に「時間のアドバンテージ」があるように見えてきませんか?受験において「時間のアドバンテージ」は、何物にも替え難いもっとも大切な資源です。もし中高一貫校のように4年で6年分を終わらすことができるなら、小6から4年で高3終わるやん、なんて野心も芽生えてきます。問題はそんな指導をしてくれるとこなんてあるの?という点ですが、個別指導、しかも学生のバイトや社会人の副業ではなく専門の先生が在籍しているところなら可能ですよ。そういうお子さん、結構いらっしゃいます。ちなみに小学校の勉強は学校レベルをこなすだけで充分です。中学受験で使う学習内容、特に算数は大学受験にそれほど必要でもないかな、と最近思います。詳しくは後述しますが、エリート後発組がうまくいくポイントはここにもあります。小5小6から大学受験でエリートを目指すのであれば、有名中学校に入ることは絶対条件ではありません。公立中学校に通いながら、プライベートで大学受験に備えてくれるところと契約することも効率の良い方法です。個別指導の多くは「部活やりながらでもOK」を掲げてますし、少しだけ時間のゆとりがあるので試行錯誤も可能ですね。実際にそういう生徒も担当していますよ。
中受と中高の学習内容の差
本来は小3までの準備と小4から2年半かける学習を、小5~6から一気に終わらせようとすることはやはり厳しい現実があります。そういうことにチャレンジしても、ちょっと無理があるお子さん・ご家庭も多く見られます。そこで先程から提案している「エリート後発組だからこそ持っているアドバンテージ」の勉強面での話をします。結論を先に言いますと、エリート後発組の場合はハイレベル高校の入試を念頭に、今から4,5年を計画的に勉強した方が効率が良いと思います。
まず算数
中学受験ではハイレベル校ほど算数の出来が合否に直結するというのは良くある話ですね。しかし中学受験を志すのが少し遅かった場合、「小5小6から猛スピードで終わらせる算数」と、中高で修めて大学受験で要求される「数学」はあまり関係ないんじゃないか、と感じています。中学受験用にと必死でやっているつるかめ算や図形問題は、中高の学習内容で充分学びます。これらは論理的考察力や高速処理能力の育成には役立ちますが、それは中高の学習内容でも十分代用できるんじゃないかと思っています。ですので、小6から中学受験を始めて本来3年かけて学ぶ所を1年で終わらせるようなハードな勉強をするより、通常なら中高合わせて6年かける勉強を、小5からスタートすればそれだけで2年のアドバンテージがありますね。さらに少し速度を上げて4~5年で高3までの数学を先取りして終わらせた方が、高校に入ってから(高校はハイレベル校を強く推しますよ)も大学受験もずっと有利じゃないかな、と真剣に思っています。これはエリート後発組だからできることですね。実際にハイレベルな高校の入試では、中学受験で失敗した子どもたちが中学在学中に猛勉強して高1を終わった状態(検定ものを準2級所持)で受験してくるのはもう当たり前な感じです。
国語について
次に現代文は語彙力と事前知識があれば基礎力がどんどん伸びるので、「小5の範囲」「中2の範囲」などは基本的に関係ありません。お子さんに適切にフィットした指導をすれば「中受」という目標に限らずその先のレベルにまで到達できます。小説系は高校レベルまで読めるが、評論系は学年通り、などのケースも数年かけてゆっくり調整できますね。逆に小5小6から中学受験を始めるというのに、国語が全然できない、語彙力も読書習慣も事前知識・生活体験も親子の会話も全然ない、という場合は他の3教科も同時進行ですから伸びて来るのにめちゃくちゃ時間が掛かります。国語はただでさえ伸びて来るのに時間が掛かるケースが多く(パッと伸びるケースも稀にあります)、一斉指導だと伸びる可能性もかなり低くなります。ちなみに国語の場合「自分はcが答えだと思ったのに、答えはbだった。」というケースは、なぜそうなるのかの説明がとても大切です。この時、一斉指導では「~だよな~」「わかるよな~」「だから当然b、それ以外は考えられない」で終わりがちですね。個別指導だと(ベテランの先生なら特に)「この生徒がどこで勘違いしているのか、cのどこが間違ってるのか、どこが読み取り違いか」までコミュニケーションを通して踏み込んで説明してくれると思います。国語は個別指導か一斉指導かによって、2年後が大きく左右される可能性があります。
理科と社会
理科と社会は世の中の一般常識とか教養と見なされる内容ですが、中学でやる内容とほぼ同じです。エリート後発組は中学受験をしない、或いは本気で考えていないのであれば中学受験の理社はやる必要もありません。もっと言えば、少し時間がかかるかもですが、小5から高校入試用の理科や社会を始めてもいいと思いますよ。できないものでは決してありませんので、どんどん進めて行ってください。ただし、「きっちりルールと順番を守って」というタイプのお子様なら小5で中学校の理社はいきなりは抵抗があると思うので、少しばかり配慮、というか先手が必要ですね。
英語は大きなアドバンテージ
ハイレベル中学に合格したとき、英語をすでにしっかりやっている生徒というのは、実際のところクラスに半分もいない感じです。ですので小5小6で中学受験を本気で始めるなら、受験科目に指定されていない限り英語は手を付けなくて大丈夫ですよ。この場合、受験教科の4教科を高速で終わらせることの方が優先順位が高いからです。でも中学受験をせずに英語を小5くらいから本格的に始めるとなると、いくつかの条件はありますが高校受験・大学受験にはかなり有利です。英語の勉強も7~8年かけることができます。ただし経験則で最近気になっていることを2つ。まず「英語は早くから始めるとよい」という風潮のせいで、インターナショナルスクールに入れる親御様がいらっしゃいます。これは別の記事にも書きましたが、ご自宅で英語が普通に使われる環境でない限り、あまりお勧めしませんよ。2つ目は、「英語はとりあえず英検っしょ」という発想から、基礎的な文法学習をしっかり積まずに英検対策問題集をガンガンやっているご家庭があります。これも別の記事を書く予定でいますが、やはりお勧めしません。英検対策問題集はそこそこ文法の理解が出来ている人が、本番前のまとめにやるようなものだと思います。対策問題だけでうまく対策すると合格するように作られてはいます。でもその対策問題集だけで合格した人の中には「答えは多分d、理由はわからん」という生徒がかなりいます。いわゆる「ニュアンス解き」を続けてきた弊害です。
小5から中1の文法を丁寧に学んでいくことで、国内の試験で得点を取ることはかなり有利になると思います。中2か中3で軽く外国に2週間でも行ければリスニングもスピーキングも最高ですね。
全部やる必要はない
小5~6からエリート志向が強くなった場合、上記の「後発組はこれをすると有利」で述べたような提案をすべてこなす必要はありません。小6で英語・数学を始めてハイレベル現代文をこなしつつ中学理社も進めて行く、みたいな。この環境をびしっと整備できるご家庭で、お子さん本人が賛成しているなら問題ないですけどね。高校受験・その後の大学受験を考えると(地域や志望校にもよりますが)1つ2つ強力な武器を持っていればそれで充分、とも考えています。というのは、沖縄はもとよりほかの地方都市もそうだと思いますが、私立高校の選択肢がほとんどなく、公立高校は内申を重視するので、生徒の高い学力を正当に評価するすべが高校側にないことも「そんなに慌てて全部をやらなくても良い」の根拠です。偏差値65以上の大学を目指すなら英語と数学は両方進めておくべき、ぐらいです。そういうことに対応している専門機関にお願いすれば、小6なら十分間に合います。そういう専門機関とは、学年問わずに学力レベルのみでクラス分けをしている集団塾(中1が高2と一緒に数ⅡB、みたいな。あ、きれいに5・7・5になってる笑)か、学年問わずにハイレベルに対応できる個別塾(家庭教師含む)ですね。高校受験や大学受験までのグランドデザイン(大まかな大計画)を一緒に作ってくれるところだとさらに安心ですね。
合理的って何?~受験を高い位置から見てみる~
中学受験で終わらせた方が親御様の心と経済の負担は早く終わります。しかし中学で習う数学(大学入試につながる数学)にあまり結びつかない中受算数を猛スピードでやって成績に一喜一憂し、中学に入ったら全くのゼロベースから数学を始める、という道程はエリートを目指すお子さんにとっては果たして「合理的」なんだろうか、と最近思っています。2年半で終わらせる内容を1年で終わらせるべく親子で悪戦苦闘、でも中学受験で落ちたらその学習内容は浅くて熟成されていないのであまり役に立たない・・・。それとも、小5から「高校大学受験のためのグランドデザイン」のもと、中高の先取り学習をするか。そもそも中学受験は合理的に良い大学に入るための手段として採る選択であり、そのために通常は幼児期から少しずつ準備していきます。でもエリート先発組よりも目覚めるのがほんの少し遅かったならば、その時点から始める最も合理的な方法は、先発組のそれと同じとは限りません。もっと合理的な手段(小5~6から中学数学や英語、現代文対策を始める)があるにもかかわらず、小6から中受を1から始める…。もちろん中学受験算数は100%役に立たない、とまでは言い切りません。ただ、そもそも中学受験で要求される算数は、「高度な計算処理能力・数的感覚」、「文章問題や図形に関する色々な考え方、柔軟な発想力」、「それらの高速処理能力」あたりです。高速処理能力を除けば、前者2つは時間をかけてじっくり熟成されて洗練されていくものと感じています。だから本来は「中受用算数」は実生活における経験をベースに、じっくり考え試行錯誤する行程、分かる喜び、他者より合理的に解答する喜びなどを育成する機能も有しています。しかし大学受験で要求されるものは「数学」です。それなら小5から算数を猛スピードで終わらせて、できるだけ早く中1数学を始め中3で数ⅠAやⅡBまで終わっておいた方が、お子さんにとってのしんどさは同じでもその後の有利さが違うと思うのです。親御様はその間ずっとしんどいですけどね。どちらにするのか、お子さんと親御様が決めることです。でも大学受験までの道のりを高い位置から総合的に見て今何をするのが最も効率が良いか、は考えておいてください。「みんなやってるし、一般的にはこれが多数派だから、遅れて参入しても同じことをやる」は指導者からすると「効率が良い」とは言えないな~なんてケースがよくあります。
中受は「失敗してもいいじゃん、経験値じゃん」でしょうか?
このことをおっしゃる親御様はかなり多くいらっしゃいます。ただですね、失敗はやはりお子さん自身にはかなり重い現実です。それを受け入れる器は育っているか、大事ですよね。また、その敗北はお子さん自身が臨んだ戦いの結果であるか、という点も大切だと思っています。本人がやりたくて望んだ試合ではないのに「君は負けだ」と言われることってとても屈辱だし、何も感じていないのであればこんな無駄はないのではないかと思います。本当は他にやりたいことがあったはずで、自立のためにはそちら(自分がやりたいこと、自分で試行錯誤すること)に時間を使うべきだったかもしれません。しかも小5小6スタートなら、超高速で勉強させて理解が浅く学力の低い状態のまま本番となり、失敗させる可能性が高いと思われます。こう考えると、本人が強く強く望んでものすごく頑張ったのにその学校から拒否される(不合格)こと(小6ですよね)、本人は全く望んでいないのに不合格して要らぬ劣等感・敗北経験をもたせ本来持っていたであろう学習機会を喪失することは、良い経験であるとか合理的選択であると言いきれるでしょうか?多分ね、結果的にはね、多くのお子さんは大丈夫なんです、良い経験になるんです。ご家族がいますから「大丈夫よ、そのままでいい」等と声をかけてくれたら立ち直るでしょうし、5年10年したら笑い話になると思います。気になるのは「親御様の不備が多すぎるご家庭」のお子さんです。お子さんが立ち直るのをサポートしない親御様、さらに「次はもっと頑張るよ」とまたレールを敷き始める親御様。お子さんがかわいそうですね。中受を失敗したら尚の事、次の高校入試は「本人の意志」で動くようにすると同時に、本人の意志をしっかり聞き出してくれるところ、本人がそう思ってくれるように伴走してくれるところにお願いするべきです。
中学受験をした生徒は、地元の公立中学に行くと飛びぬけた成績ですからかなり有利です。そういう意味でも、「中学受験は失敗しても良い経験になる」は否定できません。でもそのことだけをもって「良い経験」と考えてよいのか、この時期の彼・彼女にとっての「良い経験」とは友人たちとつるんだり世の中を自分の目で見つめて自立の準備を始めることではなかったか。そんな問いは持っておいていただきたいところです。
中学高校の入学時の偏差値と卒業時の進路実績は一致しない
ちなみに、いい大学に合格するにはいい中学に入ることが絶対条件、というわけでもありません。推測とか印象にしか過ぎませんが(根拠はちょっとだけあります)、入学時の偏差値の高い中学高校が必ずしも抜群の進路結果を出しているかというと、そうとは限りません。全国でハイレベルと言われる中学・高校の「進路実績」「大学合格実績」などを見るとなんとなくわかる(10校ぐらい比較してみてくださいね)のですが、入学したときのレベルに比べて卒業時のレベル、卒業生の大学実績が「あれ???」ということはよくあります。中学では偏差値〇〇なのに、偏差値〇〇以上の大学に合格している生徒ってこれだけ?的な・・・。中学受験と大学受験とでは別物だから(母集団数が違う等)同じ偏差値は使えない、とはよく言われるんですけどね。ちなみに冷酷非情な現実ですが、どのハイレベル校でも下位2割ぐらいは自信とやる気と適切な指導者(勉強指導はもちろんメンタルケアや進路・適性見極め、親御様へのほうれんそうなどで関わってくれる大人、と言い換えても良い)を失っているお子さんが多いので、7~8割の生徒がどれくらいの結果を出しているか、を見てくださいね。いい大学に何人入ったのかを宣伝するところは多いのですが、どの学校も上位層はいい所に入ります。ほっておいても勉強するお子さん、ご家庭ですからね。しかし中層がどこまで踏ん張れているか、という点が大事です。自分の子が必ずしもその学校で上位に入れるなんて限りません。中層でどのあたりか、を参考にしてみてください。偏差値68の中学に合格して真ん中ぐらいの順位だったが、大学は偏差値54をなんとか合格できた、なんて釈然としないですよね。そこって地元の公立高校からでも十分行けたやん、的な。ですので慌てて中学受験する前に学校選びも大事ですよ。地方にお住まいなら選択肢が少ない分、「遅まきながら激しい受験対策をしてまで行く価値のある学校か?」は慎重に情報収集をしてくださいね。
最後に1つ
エリート後発組は、傾向として「お子さん自身が本心から希望している」「お子さんが言い出して親御さんが超慌てている(笑)」というケースがとても多いように感じます。将来のために今から準備しようとするなら、「誰の希望か」という点は、職業・人柄・能力などの分野に関わらずとても重要なポイントです。私も指導していて、「才能・環境より、この『本人の強い願望』の方が大事なんじゃないか」と思うこともよくありますよ。もちろん強い願望と才能と環境が同時にあればもう手が付けられないですし、そうなるように指導するのではありますけど。この意味では後発組はかなり有利かもしれないですね。例えば医者に育てようと思っている(親御様の希望)のか医者になりたいと思っている(お子さんの希望)のか、という点では、もちろん「本人の希望である」状態のほうが、これからの7~8年間を考えると圧倒的に有利ですよやっぱり。学力向上において(ひょっとしたらそれ以外のことでも)精神状態というのは、学習の量と質にプラスにもマイナスにも大きな影響を与えます。本人の希望であるなら、勉強に向かう精神状態はかなり良い状態だと思います。
親御様の意向である場合、お子さんは他者(ここでは親御様)の意向を「自分のこと」として「受け入れるのか、拒否する(あるいは敗北を認める)のか」を決める日がやがて来ます。親御様が自分の希望も聞かずに勝手にレールを敷き、それを走ることを希望している(強制している)という状況はよくある光景で、これを受け入れるかどうかを、中学高校ぐらいでお子さん自身が突き付けられます。親御様の強制と地頭の良さ人柄の従順さでいい中学・高校に合格してしまったお子さんは、この先が難しいんですよね。他者の意向を受け入れられないお子さんはそのいい中学高校で底辺近くの成績をさまようことが多く、教師や学校側、親御様も手を焼ているが解決策がいまいち見つからない、といういつものパターンに陥ります。結果、いい中学に入ったはいいが、在学中は底辺の成績をさまよい大学は結局普通の所に行った、というあのパターンですね。小学校までは親のいう事を聞きますので、先発隊は比較的中学受験での成功率は高くなります。しかしその後の6年間は自立期に入りますので、小学生の時と同じような対応の仕方だと、反抗や自信喪失を誘発します。対応の仕方を変えないといけないし、ご自身や周囲にハイレベル大学受験の経験者がいなければ、環境整備や心理的効果についてちゃんと勉強した方がいいかもしれませんね。「ほっておく」のと「配慮や環境整備などの先手は打っておいて、あとは見守る、都度都度で対応していく」のとは違います。その点、自分から言い出した後発組は親御様や学校など他者からエンジンを何度もかけてもらわなくても良いので、親御様の介入は少なくて済むと思います。この「自分から言い出した」は何よりも大切なモチベーションです。これは先天的な高いIQよりもずっと大切な成功要素となりますよ。もし本人から「エエ大学に行きたいねん」と言い出したなら、ぜひ大切にしてあげてください。そのことだけでかなり成功確率が高くなります。
まとめ
スタートがちょっと遅れたと言っても、小6からエリートコースを目指すことは全然遅れてはいませんよ。中学受験ではなく、高校受験を考えるとあせる必要もありません。ハイレベル塾に入っている小6も、エリートになりたいと思い立ったばかりの小6でも、最終目標である大学受験までは残された時間は同じです。もっと言えば、アプローチと考え方を変えると十分逆転は可能です。いい中学高校に入っても、お子さん自身が「私はエリートになりたい」と思う事、そのために具体的に自分の行動を制御する事ができないことの方が大きな問題です。無理やり良い中学に入れてもその後の6年間で鳴かず飛ばずになるケースはよく見られます。しかしエリート後発組によく見られる「小6になって自分からエリートになりたいと言ってきたタイプ」なら、これほど最高のメンタルの状態はない、ぐらいに思います。さらに言うと、お子さんはもう自立期に入っているので早期教育や中学受験期のような「親御様の過干渉」は逆効果となります。親御様はそのあたりの指導をちゃんとしてくれる指導者選びをして、協力体制を整えながら少し離れた所で見守ることに専念する方が良いと思います。親御様が他人任せになければ、うまく行きますよ。ぜひ長い目で導いてあげてください。お子様とご家族のより良い人生を心から祈っております。