やる気の燃料と消火剤
はじめに
勉強を頑張るお子さん方にとって、「やる気」というのは本人はもちろん、第三者もなかなか培うことは難しい事柄ですね。でも、最近こう思います。やる気というものはどのお子さんも種火は持っている。その前提の上で、やる気は「燃料があれば燃え上がり、消火剤があると消えてしまう」というような切り口で捉えて見ると、少しすっきりするのではないか・・・。
つまり、「やる気がない・・・」と言われる(あるいは自分でそう言う)お子さんの多くは、やる気の燃料がなくなったり消火剤をまかれているのではないか、という印象です。子どもたちを指導していて思うことなんですけれどもね。
好きなことをやっているときって、このやる気の燃料がどんどん投下されていて、その好きなことがそうでもなくなる時って、燃料がなくなる時か消火剤がまかれた時かな~と思うんです。
やる気の燃料って何?
すべての領域でやる気の火が完全に消えるということは、恐らく子どもの間はないと思っています。子どもはもちろんすべての人間は、「向上したい」「幸せになりたい」と考えて生きていると信じております(変な宗教には入信しておりませんよ笑)。ただ、やる気は無条件で無尽蔵に湧いて出てくるものなのかというと、この世知辛い世の中、そう甘くはないんですよね。大人になればなるほどこれを痛感します。お子さんが受験で勉強に臨む時に限定すると、種火(やりたい、やらなければならないという気持ち)はあるが、燃料(実際に動き出す、動き続ける根拠)は供給し続けなければならないし、やる気を失わせるような消火剤は除去し続けなければならない、というイメージです。そこでまずやる気の燃料となるものって何か?を以下に考えてみました。やる気の種火は誰でもある(種火の大小はある)ので、あとは燃料です。もちろん燃料と言うぐらいですからいつか使い切りますので、定期的に追加しなければなりません。すぐに燃え尽きるものもあれば長持ちするものもあります。瞬間的に燃えるのを好むお子さんもいれば、じわじわ燃えるのが大切と思うお子さんもいます。さらに言えば、親御さんが燃料と考えている事柄がお子さんにとっては強力な消火剤となっているケースもあります。例えば、「もっとできるはずだから頑張れ頑張れ」と応援したりお子さん本人が望んでいないのに問題集を買い集めたりすることなどは、お子さんにとってみれば「強制」に感じることが多いですよ。このような、「画一的でない事象」に取り組むためには、親御様はもちろん、知識と愛情を持ってお子さんをしっかり見る大人が多ければいいですね。ということでまずは「やる気の燃料」ってこんな感じでしょうか。
やる気の燃料とは
ちょっとダラダラと長くなりそうですが、挙げてみますね。以下のことをすべてやるべき、ではないですよ。いくつか、で大丈夫です。意識されるだけでもかなり変わります。読み返したら、重複するところもたくさんありましたけど・・・。以下のようなものをいくつか準備できれば、あるいは経験できたら、やる気は上がってきます。準備するのは最初の時点では大人です。意識の高い親御様は、「競争に勝つ」「オレは優秀」「〇〇大好き・超得意」等のモチベーションを幼児期・学童期前期に経験させ終わっておりますよ。これらは早期教育ですな。
1.自覚できる勝利や向上
「勝った」「レベルアップした」と思えることはとても分かりやすい即効性のある燃料だと思います。これは最初から「お子さん自身が勝ち取るもの」と考えると、恐らく負の無限ループにはまります。「最初は大人側が準備してあげるもの」と考えたほうがいいかと思います。塾に入ったとしても「勝てない塾」だと、そこでのモチベーションはあがりにくくなりますね。通っているだけでプライドになっている、というケースも見られますけどね。
ちなみに、昨今ゲームに夢中になる子が多いですが、ゲームは短時間で自身のレベル向上や勝利がとても分かりやすく設計されており、「もっと次へ」という気持ちが湧いてきます。これはそもそも専門家の大人たちが総がかりでそのように作っているんですね。ゲームにハマる子って、ある意味勝利や向上に飢えているんではないかと思います。逆にいうと、それを勉強に転化できたら良いな~という発想があります。めちゃくちゃ難しくてなかなかレベルアップもできない、相手にボコられて、ストーリーも難解なら、例えゲームでもすぐ辞めます。勉強に関してこの状態を強制されていませんか?現実世界(塾や模試)では、勝てる環境にいますか?分かる授業クラスに在籍していますか?成績を意識させていますか?どこをどれくらいやればどんな結果になるか予想できますか?予想してくれる指導者はいますか?数字で優秀であること、優秀になったことを実感できるものはありますか。「とりあえず頑張りなさい、合格したら良い事があるから」は小学校低学年まで。「とりあえずあの塾に任せておけばOK」は最近の傾向でいうと「ちょっと伸びないかも~」な印象です。
2.自分の優秀さの証明
成績上位者に名前が載るとか、今まで平均点にすら届かなかったのが平均点を超えられたとか、みんなの前で褒められたとか、テンション上がりますよね。お子さんの近くに、彼の(彼女の)小さな向上や勝利を見つける人・手放しに褒める人・認める人・分析する人・今後を見通してくれる人はいますか?親御様が結果を出させていますか?「やれ」と指示したあと(指示しなかったとしても)、結果についていっしょに考察していますか?お子さんと同じ方向を見ていますか?親御様が「どう判断すべきなのか分からない」なら、お子さんはもっと「意味分からない」「なんでこれやってるの?」ですよ。塾の先生や教育相談を受け付けているサイトなど、双方向に意見交換できる専門家を見つけて質問しまくってみてください。
3.賞賛されて嬉しい人からの賞賛
尊敬している人やライバルから認められると自己有能感『オレは優秀だ』がグッと強化されます。また集団から認められるとものすごい有能感が身につきます(これを上手く使える授業巧者はクラス全体の成績が伸びる)。ちなみに学童期後半(小4以降)は、親御様からの賞賛を快いと思うとは限りません。特に強制されている場合は親御様に勉強については口出しされたくないとさえ思っているかもしれません。もっと言うと、親御様の誉め言葉が「薄いな~」とお子さんにバレているときもありますよ。しかし「お母さんが気を遣って褒めてくれているから、私も喜んでいる演技をしよう」、という健気な子までいます。お互いの忖度が過ぎて、非生産的ですな。でも子どもは「これは非生産的だ」なんて考えつきませんから、演技は続けてくれます。
4.目的の完遂
「自分の希望に沿って自分が設定した目標」(←ここ重要)をクリアすることは自己有能感「おれはできる」「オレは優秀」を強化しますよ。クリアしたことを実感させていますか。親を嫌っている場合、クリアしたことを一緒に喜んでくれる第三者(もう一方の親、塾の先生、祖父母、兄弟、親戚、友人など)はいますか。これを言うと、じゃあ早速今日から学習計画表を作らせよう、となる親御様がいらっしゃるんですが、この能力は少しずつ向上していくものだと感じています。子どもの頃には、自分の将来を見据えて今やるべきことをリストアップするなんて能力も意識もありません。意識ができて試行錯誤があってはじめて形になる能力です。ですからこれを使うなら、最初はゆるーい目標でいいですし親御様の介入はできるだけ少ない方がいいですよからね。さらに言うと、「お母さまはきっちり計画を立ててバランスよく進めていくタイプ」だとしても、お子さんはその逆、つまり「気分による一点集中タイプ」だった時、指導者(親御様)と生徒(お子さん)のタイプが真逆であるときは考えものです。指導者を替えるか指導者が変わるか、ですね。
5.大目標のための小目標がはっきり見えている
○○中学・高校に合格したいと思っているとき、これとこれをやればよいなどの具体的な道筋が見えていてそれが実現可能(実際にそれで成績を上げた経験がある)と判断しているときは、やる気もそれほど苦労せずに湧いてきます。しかし「どうしたらいいかわからん」「どうせ無理」「なんでやらないといけないの?」と思っていると、動き出すのが鈍くなります。
6.その行為自体が楽しい
勉強内容が楽しいと言う生徒も実は意外にいます。特に実体験が伴う領域(買い物によく連れて行かれるお子さんは割引計算、自然が好きなお子さんは昆虫や植物、旅行好きなご家庭のお子さんなら地理など)が好き・得意になることは多いですね。ただこういうタイプは集団授業のレベルよりもその領域ではかなり上を行っているので、親御様が意識されてさらに先を提供し続けることができれば最高です。また算数や理科など、考えて考えて出した答えが正解だった時(さらに「この正解者はクラスで3人だった」なども)の達成感がたまらんと言う生徒もいます。さらに勉強自体が好きというより、自分の成績をコントロール(メタ認知みたいなもの)して上位者に名前が載ることを快感とする生徒も中学生ぐらいから出てきますね。
7.義務感や、やらなかったときの損害を経験している
大人になると「やりたくないけどやらないといけない」なんてこと、山ほどありますよね。こういうとき、大人は「やらなかった場合の実損害」をある程度計算できるから、つまり失いたくないものがあるから「仕方ねーなー、やるかー」となります。やらなかった時、到達しなかった時に何か大切なものを失うというアプローチ(ちょっと恐怖支配も入りますけどね)も1つのモチベーションになりますね。でもね、ただの脅し文句だとだめですよ。「50点以下だとテレビ禁止だから」と言ったにもかかわらず、38点を取って来ても家族でテレビを見ることをなんとなくOKしてしまうと、子どもでも学習します。テレビに関してはただの脅しだ、と。やるならかなり効き目があることを初志貫徹、できないなら最初からそんなハッタリは言わない方が良いですね。
8.本格的な危機感
薄っぺらいお叱りの言葉ではなくて、命の危険(お子さんにはやめてくださいね)、絶対に譲れない部分(あいつにだけは負けたくない、あいつに負けるぐらいなら死んだ方がましだ的な)に本当の危機が迫ると人間は本気になります。でも危機が去ると弛緩しますけどね。この話でよく引き合いに出されるのは、動物に命の危険が迫った時の話です。食べられる側の動物は自分がヤバくなった時逃げるためにはまさに死力を尽くします。日頃はゴロゴロしていても、「ヤバい、死ぬ」と判断したときはものすごいパワーで相手を撃退したり、ありえない速度で逃げたりします。このような状況を人工的に作り出して、お子さんにやらざるを得ない状況に持って行く御家庭もたまにありますね。こういうことは「けしからん」という話かもしれませんが、私は結果的に良ければちょっとぐらいはいいんじゃないか、と思っています。せっかく親御様が有利な状況を作ることができる(意識、お金、経験がある)アドバンテージがあるのに、それを行使せず完全に子ども待ちですとうまく行くものも行かないかもしれませんね。でも「結果が良ければすべてよしかどうかを判断するのは将来のお子さん」であり、それを見越して「今はちょっときついかもしれないけど強制を入れながらでも導いてやる」を決めるのは親御様ですけどね。「強制したけど失敗した、何も残らんかった、めちゃくちゃグレてもうた、メンタルやられてもうた」という時はご相談ください。微力ながら何かちょっと取り返すヒントぐらいならお話しできるかもしれません。
9.社会的意義(誰かが喜ぶ、誰かの為に私がやっている)
お子さんが頑張ることを喜んでくれる人がいればそれは強い味方です。働くお父さん母さんも、「家族の笑顔を思えば頑張れる」というやつと同じです。子どももそんな心境にはなります。お母さんがあんなに喜んでくれて、私ももっと頑張ろう、みたいなご家庭は結構多いですよ。「母は女優」ではなく「家族は全員俳優」になることをお勧めします。「今日のおかずどうしたの?これ高級ステーキじゃん」「隆司が昨日ね、あれだけ苦労した算数でやっと平均点を取ったの」「えっ、す、すげえじゃん、あの塾で平均点?それは高級ステーキで当然だな、隆司おめでとう、ありがとう。明日は俺からもおめでとうなモノを買ってくるぜ」的な・・・。もちろん急にかつ単発でやっても意味はないですよ(上の例だと、家族全員が俳優になること)。やる気の燃料になるもののうち、親御様が継続して提供できるものをえらんでやってください。
また、お医者さんなどは「困っている人」「苦しんでいる人」を治す社会的意義の大きな職種ですね。目標となる根拠がこのような「社会的意義」に根ざしたもの(もちろん自分から言い出したもの)であるならば、やる気の種火は非常に強いものがあり、やる気の燃料も非常に効率よく燃えてくれます。
10.豊富で整理された正確な情報
選択肢が示されて情報を持っていることは具体的な行動を起こしやすいですね。なぜこれをやるのか、どのような順序で進めるのが効率がよいのか、注意点は何か、失敗するとどうなるのか、自分はどう伸びてきているのかなどは、知っていれば知っているほど「じゃあ次はこうしよう、こうしたい」となりますよ。
やる気の消火剤とは
しかし逆にやる気を阻害するもの(消火剤)もあるように感じます。以下にそれらを挙げて参りますが、もちろん「絶対にだめです」で終わるわけではなく、対処方法や改善方法もあり、たまに「良い方に転ぶケース」もありますのでご参考程度でお読みください。
1.強制(あれをやりなさい、もう準備しておいたから)
私が最もお勧めしないアプローチです。これは本当にだめです。最も消火効果の高い要素だと思います。ただ、この強制に限らずですが、同時に強い燃料があれば、消火効果も小さくなるとは思います。「最初は強制で始めたけど、なんか成績上位者に載ってしまってみんなから賞賛を浴びるんだけど・・・、嫌な気はしない」的な感じだと強制は結果的にOKです「が」。この「強制の程度」はお子さんの状態次第で一概には言えない、とも考えております。「ただ親御様が張り切りすぎる強制、しかも何もお子さんにとっての燃料にはならない」には気を付けていただきたいな、と。強制をするなら必ず結果を出してあげてくださいね。親御様が「これはすごい」と言うのではなく、お子さん自身が心から感じる「良かった」「オレはすごい」を達成できるお手伝いをしてあげてください。
2.理不尽なプレッシャー、器を越えたプレッシャー
子ども自身が無理と思っているのに周囲が「出来るはず(できないのは努力不足)」「できるまでやれ」などの姿勢ですと、お子さんとしては内側から出る「本来のやる気」は出にくいかなと思います。「外圧によるやる気」とも言いましょうか。昭和のやり方ですとこれが主流でしたけどね。しかしそれで失敗したらさらに自信喪失ですね。お子さんが成功と感じることを提供せずに、挑戦→敗退の繰り返しだとやがてやる気は枯渇し、軽い燃料だけではもう燃え上がらなくなってしまいます。こういう状態のお子さん、多いですよ。まずは成功体験からですね。そして現状を見据えた短期目標の設定と、最終目標を掲げた上での中長期での計画ですね。やる気や自信を失っている状態で「半年以内で偏差値25上げろ」とか、それはまさに理不尽。
3.納得のいかない叱られ方
お子さんの言い分を聞かない、勉強や宿題をする理由が判然としない(絶対有利だから、大人になったらわかる等)、叱る人がそれを言うに値するか(机に向かえと言う親は隣室でテレビに爆笑している等)などは「なんでやねん」「やってられへん」となる可能性は大です。
あとちょっと笑ってしまう「あるある」で、生徒がよく言う「イヤな叱られ方」があります。「やる気がないんだったらもうやめなさい。」とか「自分のやりたいことを言いなさい・選びなさい。」と選択の自由を与えた振りをしながら、すぐに手のひらを返してその選択肢を取り上げる、なかったことにしてもとに位置に戻される、というケースですね。これね、意外にお子さんはこういうことをする親御様の迷走を見抜いてますよ。10年20年して笑い話になればいいのですけどね。
4.勝利や向上が自覚できない
自分がレベルアップしていることを全く感じられない状態ですと「なぜ頑張っているのか?」「私には能力や適性がないのではないか?」となるのは時間の問題です。「それは本人が頑張らないから」と言いがちですが、それが当てはまるのはお子さん自身の意志でその世界に入った時のみです。「やるでしょ?やるよね?やらないといけないよね?もう準備してあるから」と外堀を埋められて逃げ道がなくなって連れてこられたお子さんは、まずはその気にさせないといけません。その気にさせる良い方法の1つは「結果を出させること」です。これは親御様や指導者などの「大人の配慮」で何とかなることもけっこうありますので親御様の腕の見せ所です。
5.そもそもそれが楽しくない
楽しくないこと、意味のないことを無目的・無報酬でやり続けることは、もはや懲罰です。勉強は楽しくないのですよ、普通は。勉強そのものが楽しい、と言うお子さんはやはり稀です。だから目的や賞賛、有能感などのやる気の燃料が必要となります。
6.他に楽しいこと・やりたいことがある
今の子ども達には楽しいことがたくさんありますね。それを遮断して楽しくないことをやらせるのはそりゃ難しいですな。特に、一点集中型のお子さんにはやりたいことをやらせないで「これをやるべき」という接し方をするのは無気力の原因となり得ます。
7.意義や価値がわからない
勉強する意義と価値、受験する意義と価値、つるかめ算を勉強する意義と価値、りんご生産量の多い県を覚える意義と価値、意義と価値、イギトカチ・・・・。「とりあえずやれ」は小4まで。誰かが受験勉強の意義と価値をお子さんがわかる言葉で説明したり、お子さん本人に向上や賞賛がないとね~。
8.情報不足
これをやっていて大丈夫か?適切か?なんでやるんだ?なんて不安は、いつもあります。なぜ勉強するのか、なぜ受験するのか(地元の中高でいいじゃん)、を理解しておかないと行動は遅くなりがちですね。勉強をする・しないでどんな有利・不利があって、有利になるためにはどんな具体的な方法と選択肢があって、どれ程現実的なのかは知っておいたほうがいいですね。「じゃあできそうじゃん」「やるべきじゃん」と思うと自分から行動するハードルが下がります。お子さんのレベルに合わせて親御様が適宜情報を与えてくださいね。
9.多すぎる選択肢
しかし、消化できない位の情報を与えて「自分で吟味してご覧」と言っても、「なんかよくわからない」「判断する基準が分からない」と思考放棄となる可能性も高いですね。情報の与え方はお子さんにとっての「適切」を見ながら与えていくのが大切です。
10.意外ですが報酬
あと、楽しくてやっていたことに報酬(物やお金、旅行など)を与えると、やがて楽しくなくなるそうですよ。その行為をやっていた理由が「目的」から「手段」にすり替わるから、ですね。受験勉強は基本的に「手段」でしかないんですけどね。楽しくやっていたとき(成績も上がるしみんなにすげぇって言われるし志望校の合格判定もAだし・・・)は、その「成績が上がった、みんなに一目置かれる、A判定連発する」、ということがすでに報酬となっています。ですからこんな状態のときに「次に偏差値70を超えたら〇〇買ってあげる」などと言うと、70を超えた後、途端に伸びなくなるかもですね。親御様の気持ちもわかりますが、欲張っちゃだめっす笑。本人がそれ(70超えたらプレステ買って)を言い出した時だけです。A判定連発でみんなから尊敬されることが当たり前になって飽きてきたら、本人が何かしら更なるステップアップの意志を示すはずですから。そのときに報酬をちらつかせるのもありかな、と。
親御様の役割
お子さんのやる気を促すのであれば、やる気の燃料を準備し、お子さんの周りに集まる消火剤を回収しながら自分からも出さないようにするのが親御様の役割かなと思います。お母様は燃料提供が上手くても同居の祖母が消火剤をぶちまけるというケースなら、祖母の行為をしっかり止めることを優先すべきです。このように親御様なりに答えを出し、試行錯誤してうまく行く方法を探し出し、お子さんとコミュニケーションをしながら同じ方向を見る状態に持って行く、というのが理想ですね。塾に丸々お願いするといっても、個別指導などは週2~3とかですので燃料は準備できても消火剤の回収は難しいッス。一斉指導ならなおのこと難しいでしょうね。しかも燃料と消火剤は例えば長男と次男で同じとは限りませんし、同じクラスの〇〇君と同じとも限りません、親子でも同じではないかもしれません。もっと言えば燃料は同じでも、火の付き方や出る火力は違うでしょうし、消火剤も然りです。この辺りは親御様の観察やさじ加減、試行錯誤、コミュニケーションが必要な部分です。また小5~6頃から自立期となってコミュニケーションできなくなる可能性があるので、それまでにそのさじ加減を知っておく必要があります。これらの「親御様がお子さんの状態を見極めて先回りや見守り等の適切な処置を施す能力」が養育能力の大きな部分であり、「中学受験は親で9割決まる」の本質である、と私は考えています。正確に言うと「中学受験は親の養育能力で9割決まる」。いい塾に入れておけば、とか、○○先生の指示や著作の通りにしとけば上手く行く、というのはなかなか難しいですね。塾も個別指導の先生も接する時間は限られていますし、一人一人のお子さんのことなんて全く知りません。何を他人に任せて親御様は何をするのか、はしっかりすり合せるべきだと思います。
ご自宅に消火剤が多い現実
多くの学習塾(特に個別指導)では、授業中に解説して練習して「オレはけっこうできる」「もっと先に進みたい」などの気持ちにさせて、その日の授業を終わります。そうすることによって自宅での勉強が有意義になります(*)。いきなりは無理でも、数か月かけてそういう状態に持って行こうと指導計画を立てます。しかし自宅でそのやる気を打ち砕かれることが多いわけです。目の前にゲームがある、家族は誰も勉強していない(勉強する空気がない)、勉強しろしろとうるさいがなぜ勉強するのか納得のいく説明のできる人がいない、勉強の意義と価値を背中で語ってくれるロールモデルがいない、などはまさにそれですね。また親御様がお子さんの理解度や成績に無関心だったり、叱咤激励の意味も含めて「そんな甘いわけないだろう」「それはまだ早い」「そんなことできて当たり前」「早くやれ」「そんなことも知らんのか」等の言葉も消火剤ですよ。例えばつるかめ算は小5の前半で習うところが多いのですが、「できるようになった」「からくりがわかった」という本質的理解(これはやる気の燃料です)が小6の中盤だったとします。それを親御様に言ったときに、「今頃分かった、とか遅いから」「算数ダメだなこりゃ」などと言ってしまうと消火効果抜群でございます。「できること」も「できるようになったこと」も認めてあげてください。また「自分がすごいと思ったこと」を評価されなかったり共感してもらえない体験が増えてくると、干渉を嫌がる年齢であることも相まって、たとえ良い評価であっても「評価されること」自体が消火剤となり、コミュニケーションそのものを拒否するお年頃になります。
(*)成績はまずは「1人でどれだけ勉強したか」の量に比例すると考えております。一人で勉強するときに、「おれはできる」という気持ちがあるとないのとでは、机に向かうときに必要な気力の量が大きく違います。(勉強習慣がない場合はこの辺の精神論以前の問題ですけどね)。宿題や家庭学習ノートなどはその「1人で勉強する」ことを目的の1つとして課されているものですね。また、「成績=お子さんの能力×勉強量×環境」と私は常々言っておりますが、その「環境」は「やる気の燃料をバンバン投下してくれる親御様、指導者、勉強空間、仲間達」「やる気の消火剤ができるだけゼロ」等、勉強量にも好影響を与える要素のことを意味しているつもりです。
まとめ
やる気というものは、燃料があればずっと燃え続け火が大きくなり、消火剤をまかれ続けると少しずつ勢いが小さくなりやがて無気力や反抗、自信喪失となっていきます。目の前のお子さんにとって何が燃料で何が消火剤か、親御様がもっとも判断しやすい位置にいるはずです。塾に入れたら終わり、金払っとけば良い、ウチの子が伸びないのは才能がないから、などとおっしゃらずに、親御様にもできることがたくさんありますので、ぜひじっくり観察してあれこれ試してみてくださいね。もちろん最初は10発打っても1発も当たらないかもしれません。自立期(反抗期)に入るとマジで何をやっても当たらなくなります。でもお子さんの受験同様、「あきらめたらそこまで」です。親が頑張ることで伸びたはずの伸び代がゼロになってしまいます。お子さんとご家族に幸あらんことを心より祈っております。
いや~、長かったっすね、、、、すいません。